USB-Cは良いことづくめ!
2012年の「iPhone 5」以来使われてきたLightningという規格は、本当にひどいものだった。高価なLightningケーブルは頻繁に故障するし、iPhone本体側にある端子の劣化も早い。事実上Apple製品の専用規格となっていて、他のガジェットとケーブルを使い回せないなど、デメリットばかりが目立った。
対するUSB-Cは、現代のAndroidスマートフォンのほとんどに採用されている汎用規格だ。
よほどの粗悪品を除けば、USB-CケーブルはLightningケーブルよりも長持ちする。モバイルバッテリーなどスマホの周辺機器も、いまやUSB-Cポートで急速充電するものが大半を占める。それでもAppleがLightningにこだわっていたのは、
規格の知的財産権を固めており、周辺機器の統制がしやすかったからだ。
iPhone 15から採用されるUSB-Cポート。MacBookシリーズで大々的に採用した規格でありながら、iPhoneへの搭載は大きく遅れた
ユーザーとしてはまったくありがたくない現状にNOを突きつけたのは、EU諸国に暮らす4億5000万人から代表者を集めた「欧州議会」である。EUの新たな規制では、域内で販売されるスマートフォンへのUSB-Cポートの搭載を必須のものと定めた。結果、
Appleもこれに従わざるを得なくなった形だ。
これは、民主的な枠組みによって決定されたルールが、Appleという巨大企業の意向に勝利した良い事例である。
変更される端子のサイズは小指よりも小さいが、大きな出来事として記憶しておきたい。
そんな念願かなって登場したニューモデルだが、値段には嘆息するばかりだ。iPhone 15の販売価格は
124800円から、iPhone 15 Proは
159800円から。昨年秋に高いと感じたiPhone 14の発売時価格(119800円)と比べても、さらに値上がりしている。
Appleが悪いわけではない。世界的な物価高が叫ばれている最中にあっても、
Appleはアメリカでの新製品販売価格を据え置いている。これは立派な企業努力の賜物だと言っていい。先進諸国では物価高と並行して賃上げが続いているため、iPhoneやMacなどのApple製品は、相対的に買いやすくなっている。
アメリカならば全機種が1000ドル以内で購入できる。日本円に直すと、 iPhone 14より右はすべて10万円となってしまう
しかし日本に限っては、2022年以来、災害級ともいえる円安が襲来中だ。また賃上げ幅でもはるかに遅れを取っており、12.5万円のスマートフォンを迷わず購入できるビジネスパーソンは少数派だろう。
日本は世界で最もiPhoneが選ばれる市場となっているが、当のiPhoneはどんどん遠くへ行ってしまう。
最新のテクノロジーを手にするのは数年お預け……というのが、円安のもたらす悲惨な現実である。
「平成時代の子ども文化」全般を愛するフリーライター。単著に『多摩あるある』と『オタサーの姫 〜オタク過密時代の植生学〜』(ともにTOブックス)ほか雑誌・MOOKなどに執筆
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