更新日:2023年12月09日 17:27
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発売中止の「トランスジェンダー本」には何が書かれているのか…原書を読んだ記者が思ったこと

うつ病や自傷行為の延長線上にトランスジェンダーの“ブーム”がある?

以降のチャプターでは、取材に基づく10代の少女たちの実例が詳述されていく。著者の視点は、10代の少女の間ではソーシャルメディアの影響によって、うつ病や自傷行為が蔓延しており、その延長線上にトランスジェンダーのブームがあるというものだ。 第1章で、シュライアーは、取材に基づき複数人の少女が男性ホルモン投与や乳房切除に到った経緯を紹介する。ここでシュライアーは、ソーシャルメディアあるいはアニメの影響で、男性ホルモン投与などに走る少女が多いこと、医師は喜んで投薬や治療を提供していることを語り、こう記している。 ===== トランスジェンダーのアイデンティティを持つ思春期の少女たちの多くは、一度も性体験や恋愛体験をしたことがない。 彼女たちは男の子にキスされたことも、女の子にキスされたこともない。彼女たちに欠けているのは人生経験である。セックスにまつわる語彙と前衛的なジェンダー論で補っている。 ====

研究者の見解は?

2章では、公衆衛生の研究者であるリサ・リットマンの見解をベースとして思春期の少女が突如、トランスを自認する「急速発症性同一性障害」というものが存在するという仮説の発表と、その批判が記述される。 3章では、インターネット上で知られる、トランスを自認するインフルエンサーたちへの取材が記されていく。ここでの著者の視点は、インフルエンサーたちが、トランスジェンダーを自認すること、あるいは男性ホルモン投与や乳房切除などによって人生は明るくなるというものだ。そして、章の後半には、こんな一文が登場する。 <インフルエンサーたちは、次のように信じてほしいのだ。彼らの人生が充実していること、トランスであること以上に多くのことが起こっていることを信じさせたいのだ。しかし、そうであることはめったにないようだ>
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「著者の主観が強調される章」も
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ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』

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