更新日:2023年12月09日 17:27
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発売中止の「トランスジェンダー本」には何が書かれているのか…原書を読んだ記者が思ったこと

「著者の主観が強調される章」も

続く4章では学校教育での状況が記される。ここで、アメリカの一部の州ではLGBTQの歴史を授業で教えることが義務づけられていること。州によっては幼稚園レベルから性自認の教育が求められていることが述べられる。 5章は、いささか著者の主観が強調される章である。ここでシュライアーは、思春期の娘がトランスジェンダーであることを認めたり、世間に公表した家庭の事例を記す。その中では、そうした家庭が「左派」であるとか「進歩的」であること。あるいは無神論や共産主義の影響を受けているのではないかという著者の見解が見え隠れする。 さらに6章では、セラピストや医師などの専門家は、患者が「自分は性同一性障害である」と自認していれば、肯定せざるを得ない状況にあることが記される。

トランスジェンダーは「社会的伝染病」?

7章では、思春期の少女の間にトランスジェンダーが「流行」するまでの文化史が概観されていく。この中でシュライアーは拒食症を例に出し、少女たちがトランスジェンダーを自認することを「社会的伝染病」だとする見解を記す。ここで、シュライアーは、かつて香港では「拒食症」は存在しなかったが、1994年に、地元のメディアがある少女が悲劇的な死を遂げたというニュースが地元メディアによって大々的に報道したことによって、同様の症状を訴える少女が続出したとする。すなわち、思春期の苦痛の表現が、自分がトランスジェンダーという主張として姿を現しているに過ぎないというわけだ。 続く8章では、スポーツ界でトランスのアスリートが登場したことで生じている問題などが、9章では思春期に男性ホルモンや生理を止める薬を投薬した場合の身体への影響が記される。 10章では、10代でトランスジェンダーを自認し「治療」をおこなったことを後悔し、安易な性自認を主張する人々や、「治療」をおこなう専門家を批判し「カルト」と呼ぶまで到った女性たちの体験談が記される。11章ではアメリカでは著名なトランス男性(本書によれば「彼はトランスジェンダーよりもトランスセクシャル、すなわち医学的に移行した言葉を好む」とされる)のポルノ男優・制作者であるバック・エンジェルに取材し、彼に「彼らはキャンディーをみている」と語らせ、多くの少女はYouTubeなどの影響でトランスを自認しているに過ぎないという見解を補強している。
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ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』

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