更新日:2023年12月09日 17:27
ニュース

発売中止の「トランスジェンダー本」には何が書かれているのか…原書を読んだ記者が思ったこと

最後に書かれているのは…

こうして、本書の最後でシュライアーは「少女たちのためになにをすべきか」として、アジテーションを記す。 その内容は、こうだ。 1:子供たちにスマートフォンを与えるな 2:親の権威を放棄しない 3:子どもの教育でジェンダー・イデオロギーを支持しない 4:家庭にプライバシーを取り戻す 5:少女を被害から引き離すための大きなステップを考える 6:少女時代を病理化するのをやめろ 7:認めることを恐れないで。女の子であることは素晴らしいことだ

いずれ他の出版社から発売されるかも?

原書を読んで感じたのが、KADOKAWAが出版を前に煽りすぎていることである。この問題に関して、同社の社員からもオフレコで話を聞いているが邦題の品のなさは明らかである。もとのタイトルは『Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters』。日本語に訳すれば「取り返しのつかないダメージ  娘たちを誘惑するトランスジェンダーの流行」である。それがどうしたら『あの子もトランスジェンダーになっているSNSで伝染する性転換ブームの悲劇』になるのか……? 一方で、当人が政治的にはSNSでもシオニスト支持を表明していたりする右派であり、政治的立場に基づいた主観は散見されるものの「ヘイト本」や「トンデモ本」とは感じられない。むしろ取材に基づいて、筆者の主観で記すという原則は守られている。ノンフィクションは報道の派生形、すなわち公平な記述を原則とするものだと誤解されることが多い。 本来のノンフィクションとは取材や体験をもとに作者が感じたことを書くものである。とりわけ1960年代にアメリカで生まれた「ニュージャーナリズム」はこの傾向を強調している。現在のアメリカのノンフィクションもその影響を受けて主観や自己主張は強い。そこを知らず記述を「デマ」と受け止めるなら、読み手の力不足でしかない。 これだけ話題になった本書の邦訳は、近いうちにどこかの出版社が手をあげるだろう。それまで待ちきれない人のために、概要を紹介した。もしこの問題を語りたい人は、今のうちに原書を読むことをオススメする。 <TEXT/昼間たかし>
ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』
1
2
3
4
おすすめ記事
ハッシュタグ