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思い出のセクシー女優・堤さやかさん降臨に興奮を抑えきれないおっさんの頭を駆け巡る懐かしき思い出

おっさんは二度死ぬ 2nd SEASON

おっさんにサプライズは難しい

 とんでもないサプライズだ。  2003年の引退から24年、あの堤さやかが颯爽と表舞台に舞い戻ってきたのである。それを受け、アラフィフ、アラフォーのおっさんどもは若き日を思い出して大歓喜だ。  堤さやかさんといえば、この「おっさんは二度死ぬ」連載においても取り扱ったことは記憶に新しい。「今はなきレンタルビデオ屋の“惑星”とAV、そしてケンさん――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第2話>」においては、彼女の代表作「ミニモミ。Fuckだぴょん!」を取り上げ、AV業界は「ミニモミ。Fuckだぴょん!」以前と以後に分けられると豪語したほどだ。  そんな堤さやかさんが突如としてTwitter(現X)に降臨した。そのサプライズの衝撃は計り知れない。  それにしても、おっさんたちって、どうしてこういった古(いにしえ)のAV女優に触れたとき、高確率で「お世話になりました」って挨拶するんだろう。現に堤さんのツイートもそんな反応で溢れている。確かにお世話にはなったんだろうけど、それを第一声でいうのは「抜いてました」という自己申告と同義だ。  考えてみてほしい。初対面の人にいきなり「抜いてました」はあまり感心できるものではない。職場でやったら大問題になる。だから、もっとこう一般常識として、時候の挨拶などから入って、そこで抜いてました、と宣言するべきではないだろうか。 「梅のつぼみもふくらみ陽だまりに春を感じる頃となりました。いかがおすごしでしょうか。お久しぶりです。あなたで抜いていました」  こうあるべきだ。

思い出される、堤さやかさんとのエピソード

 さて、そんな堤さやかさんが表舞台に帰ってくるという特大サプライズがあったが、堤さんとサプライズというとどうしても思い出すエピソードがある。今日はそんな話をしてみたい。  あれは、ちょうど今頃のように、寒いながら少しだけ冬の寒さが和らぎつつあり、徐々に春の訪れを感じられる時期だったように思う。まさしく梅のつぼみもふくらみ陽だまりに春を感じる頃だ。  その日は、おっさんどもが集まって定例の飲み会が開催されることとなった。そこで一人のおっさんから提案があった。 「山ちゃんにサプライズを仕掛けよう」  山ちゃんとは最近になって長いあいだ彼を苦しめていた尿路結石、それがコロンと取れるというお祝い事があった人だ。苦痛の日々から解放されたということで、いつもの飲み会の流れで盛大にその尿路結石を祝おうという提案だ。  そこは悪ノリが好きな連中だ。尿路結石を盛大に祝うというアンバランスな状態に胸をワクワクさせたのだ。しかしながら、僕はそのサプライズには否定的だった。なぜなら、おっさんにサプライズは難しいからだ。  そもそも、おっさんはサプライズに向かない。まず仕掛ける側の問題だ。サプライズを仕掛ける側はちょっとしたノリの良さや「誰かを驚かせたい」という弾けるように瑞々しい気持ちが大切だ。おっさんどもはそれらの気持ちを遠い日々に置き忘れてきた。はやい話、サプライズなんかどうでもよくて酒があればいいという人が多い。  さらに受ける側も問題だ。僕らおっさんが若かりし時代はサプライズなんてものはそこまで一般に浸透しているものではなかった。もしかしたら、そんな単語も使っていなかったかもしれない。もっぱら誰かを陥れる「どっきり」が主戦で、驚かせつつ誰かを喜ばせる、それはけっこう珍しい事だったように思う。  だから、サプライズに慣れていない。驚き、喜ぶことが下手なのだ。たぶん硬直するのが関の山だ。僕だっていきなりサプライズで誕生祝いが始まってみんながハッピーバースデーとか歌いだしたら、どう反応していいいか分からず怒り出すと思う。下手したら机をひっくり返して帰る。  まあ、端的にいうと、やるほう、やられるほう、双方ともにおっさんはサプライズに慣れていないし、向いていないのだ。
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「尿路結石おめでとう」サプライズを仕掛けるために画策したこと
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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