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思い出のセクシー女優・堤さやかさん降臨に興奮を抑えきれないおっさんの頭を駆け巡る懐かしき思い出

地獄のような状況を皆が受け入れるしかなく……

「はーい、堤さやかのDVD~!」  と軽やかにやってきたメンバー。渡す相手がぜんぜん関係ない岡ちゃんであることに気が付く。 「岡ちゃん、交際相手が見つかっておめでとー!」  首謀者がまた状況説明するかのように大声をあげる。それを受けて彼もうっすらと状況を理解したようだった。  さて、ここからが彼の腕の見せ所である。もはや堤さやかのDVDを渡さないわけにはいかない。けれども、どう説明してそれをプレゼントするのか。サプライズを知るメンバーと岡ちゃんの注目が注がれた。 「岡ちゃんの交際相手が堤さやかに似ていると聞きまして~」  苦しい。とても苦しい。けれどももうこの道しか残っていなかったように思う。それほどに活路のない状況だった。むしろ彼はよくやったと褒められるべきだ。 「は? 似てないが?」 「ぜんぜん似ていないが?」 「堤さやかさんのほうが美人だが」  岡ちゃんがめちゃくちゃ食い下がってくる。 「いや……そう聞きまして……」  頑張った彼の声が消え入りそうなほどに小さくなっていく。

あれから幾星霜。堤さやかさんにぜひ思いをお伝えしたい

「だれがいったの?」 「誰にもあわせてないのになんで?」 「ねえ、なんで?」 「堤さやかさんというよりむしろ長瀬愛さん寄り」  と岡ちゃんがしつこい。首謀者が「まあまあ」と誤魔化しても引き下がらない。その引き下がらない感じ、岡ちゃんになかなか交際相手が見つからなかった理由の一端を垣間見たような気がした。  とにかくやるほうもやられるほうも、おっさんはサプライズに慣れていないのだ。だからこんな悲劇が巻き起こってしまう。それでも岡ちゃんもやはり若かりし日に堤さやかさんに「お世話になった」わけで大ファンだったらしく、喜んでDVD3枚を受け取ってくれた。  今回、そんな岡ちゃんと山ちゃんに堤さやかさんがTwitter(現X)に降臨したと連絡したところ、二人とも口を揃えて「俺はTwitterやってないけどお世話になりました」と書いてくれと依頼があった。  それからすぐに、「でもいきなり抜いてました宣言もだめだな、時候の挨拶を絡めておいてくれ」と、さすが僕の友人だけあって礼節をわきまえている依頼があった。ということでここで、堤さやかさんにメッセージを送りたい。  梅のつぼみもふくらみ陽だまりに春を感じる頃となりました。いかがおすごしでしょうか。堤さやかさん。僕も山ちゃんも岡ちゃんも、あなたで抜いていました。 <ロゴ/薊>
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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