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思い出のセクシー女優・堤さやかさん降臨に興奮を抑えきれないおっさんの頭を駆け巡る懐かしき思い出

「尿路結石おめでとう」サプライズを仕掛けるために画策したこと

 そんな慣れていないおっさんたちが同じく慣れていないおっさんにサプライズを仕掛けようというのだから、かなりの難易度であることは想像に難くない。  作戦はこうだった。居酒屋での飲み会の流れで、突如としてサプライズを知る数名のメンバーが「おめでとう」と拍手をする。店の奥では飲み会を欠席するはずだったメンバーが数人待機しており、その一人が花束を持参する。尿路結石おめでとうと一同が盛り上がる。  おそらく山ちゃんは困惑するだろう。尿路結石って大々的に祝うものなの!?ってなるはずだ。そこでさらに待機していた別のメンバーが店の奥からケーキを持参してくる。ケーキには「尿路結石おめでとう」とチョコで書かれたプレートが乗っている。このへんで山ちゃんもついつい笑っちゃうはずだ。  さらにそれだけでは終わらない。山ちゃんが青春時代にお世話になった堤さやかさんの「ミニモミ。Fuckだぴょん!1ばん」と「2ばん」のDVD、そして「蘇る!モザイクリマスター堤さやか」のDVDだ。いずれもとうに販売終了となっているので、メンバーが必死に中古屋を周って探した逸品だ。  尿路結石が出たことを祝うサプライズにここまで波状攻撃を行う。サプライズ慣れしていない山ちゃんはどんな反応を見せるのだろうか。楽しみでもあり、不安でもある。  いよいよ、飲み会の日となった。花束にケーキ、堤さやかのDVDも準備し、別メンバーが奥のテーブルに待機する。店に協力してもらい、サプライズが始まると照明が少し落ち、ちょっとゴージャスな音楽が鳴る。すごく感動的な雰囲気になるけど、尿路結石なのだ。  サプライズの中心メンバーが正規の座席に座り、少し遅れてサプライズのことを知らないメンバーも合流する。全員がサプライズを知っているとどうしてもおかしな雰囲気になるので、ごく一部にしか知らせなかった。そして大本命の山ちゃんも座席につき、いよいよ飲み会が開始となった。

サプライズ成功と思いきや、まさかの別サプライズが……

 我々おっさんは本当にサプライズに慣れていない。どのタイミングで始まるかドキドキして心臓が止まりそうになる。あきらかに不自然な動きになってしまい、サプライズを知るメンバーだけロボットダンスみたいになって焼き鳥を食べていた。 「突然ですが、おめでとう!」  サプライズを知るメンバーが突如として切り出した。まだ早い、間が悪い、ぜんぜん気が熟していない、と思ったけど、このズレた間の悪さがサプライズ慣れしていないおっさんっぽい。 「おめでとう!」  サプライズを知るメンバーが続いて声を上げる。それと共に勢いよく拍手をする。メンバーの多くは戸惑っているようだった。なにせみんな「おめでとう」といわれる心当たりがあまりないのだ。おっさんはもうそんなに祝われることなんてないのだ。とうの山ちゃんも「なんだなんだ」とキョロキョロしている。まさか自分の尿路結石を祝われるとは思うまい。  そして、店の照明がトーンダウンし、音楽が鳴り響く。誰が見てもサプライズが始まると分かる状態だ。みんな「この中の誰かが祝われるんだ」と理解した。  その瞬間だった。予想だにしない事件が起こった。 「うおーーーー、ありがとう!」  山ちゃんの隣にいた岡島さんが突如として泣き始めた。いい大人なのにこんなに泣く?といいたくなるほどグズグズに泣き出したのだ。 「まさか俺が交際相手を見つけたことをこんなに祝ってくれるなんて」  かねてから結婚相談所に通ってけっこう高額な金を払っていた岡島さん。ついに女性と交際するところにまでこぎつけたらしい。 「すぐ振られたりしたら恥ずかしいから誰にも言ってなかったのになんで知ってるんだよ、お前ら」  いや、誰も知らなかった。
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尿路結石のことを誰も切り出せなくなった
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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