更新日:2024年06月21日 13:52
エンタメ

アイドルを「辞めて就職も考えました」「辞めたいと思ったことは1ミリもないです」……続けた側と辞めた側が交錯したマジパン8周年ライブ

2019年以降の日本は、アイドルにとって冬の時代だと言っても過言ではないだろう。ただでさえアイドルブームが落ち着いてきているところに、いきなりほぼ全てのフェスやライブが中止となって活動すらままならなくなったばかりか、YouTuber、Vtuberら配信者の台頭や、エンタメの一極集中化など、相次ぐ逆風によって解散・活動休止に追い込まれたグループは数えきれない。 この状況下でしぶとく生き残り、着実にファンを増やし続けているアイドルグループをご存じだろうか。それが、「マジカル・パンチライン(通称・マジパン)」だ。ガラガラのステージからスタートして、初代リーダー兼プロデューサーの卒業、レコード会社からの契約解除、主要メンバーの一斉卒業など、美談だけでは語れない道を歩むも2月24日にZepp shinjuku(東京)で開催した8周年ライブのチケットは完売御礼。世間的にはまだ”無名”かもしれないが、”実は売れている”グループなのだ。今宵はそんな彼女たちのたくましさと、ライブの舞台裏をお届けしたい。
マジパン

公開リハーサルにも長蛇の列が

事務所を退所したメンバー、活動休止中のメンバーも集まった特別な“同窓会”

8周年のライブの目玉の一つが“卒業生”が全員集結すること。実はマジパンからは、’18年3月に創設者の佐藤麗奈、’20年12月に浅野杏奈、小山璃奈(当時は小山リーナ名義)、清水ひまわり、’21年9月に吉田優良里が卒業し、現メンバー5人の内、“初期メン”はリーダーの沖口優奈しか残っていないのだ。しかも卒業生5人中3人は表立った活動を発信しておらず、さらにその内2人は事務所も退所済。それが一同に会すということが異例であることは想像に難くないだろう。一人ずつ話を聞いていくと、二つ返事で出演をOKした者から悩んだ者まで三者三様だったようで……。
マジパン

本番直前の円陣。さながら同窓会のような空気感だ

佐藤麗奈(さとうれな・卒業生)「私はすぐにOKしました! 私が始めたグループが、私や初期メンバーがいなくなってもこうして続いてくれてることが嬉しいし、今日がマジパンのまた新しいスタートの日になればいいなって思ったので。10年、15年と続いて欲しい! 逆に私自身は、新しく自分のやりたいことを探していこうと思っています」
マジパン

初代リーダーの佐藤麗奈。沖口以外の現メンバーとは面識がなかったが、出演することにためらいいはなかったという

小山璃奈(こやまりな・卒業生)「私も迷わず出演を決めました。だってみんな集まるってなんか楽しそうじゃないです~! パフォーマンスへの不安? 全然ないです!『現役生には負けねえぞぉ~』って気持ちでステージに立ちます! なんですけど…さっき衣装を壊しちゃったんですよね(笑)。そういえば現役生だったときにもレッスンに靴を持っていくのを忘れて1人だけ靴下で踊ることになったこともあったなあ」
マジパン

元マジパンの歌姫はリハーサルでも気合十分。「もうすぐ夢だった小山璃奈個人のファンクラブを開設するので、みんな入ってくださいね♡」

吉田優良里(よしだゆらり・卒業生)「私は悩みました。元々辞めたくて辞めたわけじゃなくて、体調不良で辞めることになってしまったので。当時も気持ち的には続けたかったから、こういう形で戻ってくることが少し複雑というか……。でも、『今の私は元気だぞ』ってところを皆さんに見せたくて! 根性だけが自分の強みだと思ってますし! それに実は今、頑張ってることがあるんですよフフフ。うまくいかなかったら恥ずかしいし、今もファンでいてくれてる皆さんを『え⁉ ゆらりすごいじゃん!』って驚かせたいので中身はまだ内緒なんですけどね(笑)。今日のステージはもちろん、私のXからは目を離さないでください!」
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誰よりもファンとの再会を楽しみにしていた吉田優良里(左から2番目)。今後の活動にも注目だ

清水ひまわり(しみずひまわり・卒業生)「私は迷ったっていうか、最初は正直出演したくなかったんですよ…。“元マジパン”っていう肩書に助けられることは多くて感謝はしてたんですけど、沖口さんから連絡がきたのが、仕事も体調の管理もうまくいかなくてめちゃくちゃ弱ってて、いろんな人に心配かけちゃってるときだったし。でもそこで沖口さんにポロっと弱音を吐いちゃったことで逆に逃げられなくなって今ここにいるんですよー!! 迂闊に断れないくらい私のことを知られすぎてしまった……(笑)。結果、今はもう無理せずやれることをやればいいんだって達観した気持ちになってます」
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体調を崩していたという清水ひまわり(右)だが、この日は名前に恥じぬ笑顔を咲かせてくれた。「これからTikTokもTwitchのゲーム配信も復活していくんで見ててください♪」

浅野杏奈(あさのあんな・卒業生)「卒業については私を含め3人同時になったこともあって、ファンの方にご心配とご迷惑をおかけしてしまいました。えっ!? 私が卒業した本当の理由ですか……実は『20歳になったら一度立ち止まって将来を考えよう』って決めてたんです。自分には何ができるのか、本当にやりたいことは何なのか。大学の友人たちが就活を始める中、私自身も芸能のお仕事を辞めて就職するのか、女優という夢を追い続けるか、しっかりと考えて卒業を選択しました。なので今回声をかけてもらったときも、『自分のわがままを通して抜けた私がここに戻ってきていいのかな』っていう葛藤はありましたね。結局『呼んでもらったからにはやるしかない!』って思って参加させてもらいましたけど! そしたら現メンバーが、私が跡をにごしたことなんて払拭するくらいに頑張ってくれていて。特に(吉澤)悠華!! リハで『これから、私!』という曲の”イチから集めればいいじゃん“って歌詞を、卒業生の模倣じゃなく自分なりの歌い方で歌ってるのを見て、感動しちゃいました。あ、でも楽屋はキレイに使うように!(笑)」
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マジパン卒業後、「ZIP!」(日本テレビ)リポーター、ラグビーワールドカップ日本代表応援サポーター2023と、見事に活躍の場を広げていっている浅野杏奈

「ロボットみたいと指摘されて…」コンプレックスを乗り越えて挑んだ8周年ライブ

この日のライブでは全20曲を披露。現役メンバーたちは本番に向けてこの1年間、特に直近の2ヶ月は定期公演も休止して毎日リハーサルとレッスンに励み、声の出し方から振り付けの細かい部分まで徹底的に磨き上げてきたという。
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ステージに入るギリギリまでメンバー間で入念な打ち合わせ

山本花奈(やまもとはな)「自分はメンバーの中でも特に”緊張しい”なのですが、Zeppが決まった1 年前からこの日 に向けてずっと準備をしてきて、さらに怒涛のリハーサル期間を乗り越えてきたので、今日は自分でも怖いくらい緊張せず、自信をもって本番に臨んで、ライブを楽しむことができました! 『ここでウインクしたい』とか『ここでメンバーと絡みたい』とか、やりたいことも全部できたし、ライブ中メンバーやファンの方の楽しそうな顔をよく見れて私も本当に幸せなライブでした!」
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山本花奈は人一倍大きな身振り手振りで観客を魅了

益田珠希(ますだたまき)「私は21年2月に加入したんですけど、とにかくずっと自分に自信が持てなくて。歌もうまくないし、表情も硬くて『ロボットみたい』って指摘もされるし、キャラが立ってるわけでもないし……。どうしたらいいかわからなくて、ライブやイベントが終わった後、家に帰ってからいつも悔しくて泣いてました。でも、たくさんのステージを経験するうちに徐々に自身が持てるようになってきて、最近はステージでも笑顔が増えたと思います! 今日は『会場に来てくださったお客さん全員と目を合わせたい!』っていう気持ちで本番に入って、全力で楽しむことができました! 自己採点は70点! 今できる最大限は頑張れたと思うけど、まだまだ自分を見つめ直して足りない部分を研究しないといけないと思ってます」
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気持ちを顔に出すのが苦手という益田珠希だが、この日は精一杯の表情でファンに気持ちを伝えた

宇佐美空来(うさみそら)「Zeppでできるって決まった時は、『えっ⁉ Zeppってなんだっけ⁉』ってくらい気持ちの整理もつかず、ただただビックリしてました。自分のパフォーマンスのクオリティが思うようにいかなくて、悩んでた時期でもありましたし。そこから、1 年後にZepp のステージに立つ自分を想像したときに、『今のままじゃなく、少しでもステージ上で堂々とパフォーマンスが出来るようになりたい!』って思って、レッスンを頑張るのはもちろん、Zeppでライブされている他のアーティストさんの映像をひたすら見たり、ライブに足を運んで勉強したりしてきました。今日は、沢山のスタッフさんが準備してくださったライブのセットや演出、本番中に聞こえてくるメンバー声とか熱、そして何より会場を満員にしてくださったファンの皆さん、もう全てが最高でした!!」
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最年少(16歳)の宇佐美空来もファンの熱量に負けないパフォーマンスを発揮した

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卒業生と現役生が息の合った歌とフリを披露し、会場は大盛り上がりとなった

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苦労を分かち合った2人、最後は抱き合って自然と涙が……
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