仕事

「選択肢が“飛ぶ”しかない」悪質なホストクラブに勤めてしまった男性のその後

「いま思えば、ハメられた」

歌舞伎町 リクさんのように、悪質なホストクラブに入店してしまい、飛ぶしか選択肢がないホストは少なくないのだが、ハヤトさん(仮名・20代)もそのひとりだ。 「僕が働いていたホストクラブは、ペナルティが多い店でした。遅刻、当日欠勤以外にも毎週ある強制同伴やイベントなど、事あるごとに罰金を取られました。当時、大学生で授業もあったので遅刻も多く、給料はほとんどありませんでした」  そんななかで、ハヤトさんを追い詰める事件が起きた。ハヤトさんの客と先輩ホストが関係を持つ、いわゆる“爆弾”関係にあったという。 「それを知った瞬間、客のことを殴ってしまったんですよね。普通なら、爆弾したホストに何かしらの罰があるはずなのに、なぜか僕が客から『訴える』と脅されて、示談金として30万円払うことになったんです。いま思えば、ハメられたんだと思います」  ホストと客が手を組んで店を辞めさせないようにするのも、悪質なホストクラブではよくあるやり口なのだとか。そこで、飛ぶことを考えた。だが、ハヤトさんも店の寮に入っているため、荷物を運び出すのは簡単ではなかった。 「店には『遅刻する』と伝え、友達にも協力してもらい、営業中に寮から自分の荷物を運び出しました。その日、店から着信が鳴り止まなかったです。それから1カ月ほど、友達の家にかくまってもらい、その間に携帯番号も変えました。それから1年は、住所が知られている実家にも歌舞伎町にも行けませんでした」

田舎の工場でひっそり働く人生に

 ハヤトさんは大学を中退し、歌舞伎町から離れた田舎で工場の仕事に就き、ひっそりと働いている。一度飛んでしまえば、その後は都内で働くことも許されない……とハヤトさんは語る。悪質なホストクラブで働くということは、人生を壊されるようなものなのだ。  今後、客にとってはもちろん、ホストにとっても悪質な店がなくなることを願うばかりだ。 <取材・文/カワノアユミ>
東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在はタイと日本を往復し、夜の街やタイに住む人を取材する海外短期滞在ライターとしても活動中。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)が発売中。X(旧Twitter):@ayumikawano
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