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「旧車會の雑誌」が新創刊、驚きの販売戦略とは…「俺らの読者は書店になんか行かねえんだよ」

あえて「紙の雑誌にこだわった」理由

愛旧ジャパン

岩橋健一郎氏

――今回の雑誌立ち上げにあたり、わざわざ紙媒体の雑誌形式を選んだ理由を教えてください。電子書籍など、デジタルメディアが主流の現代において、あえて紙の雑誌にこだわった理由は何でしょうか? 岩橋:俺らがあえて紙の雑誌にこだわったのは、読者との「リアルな繋がり」を大切にしたいからなんだよ。今はスマホひとつでどこでも情報が手に入る時代だけど、バイク乗りの世界ってのは、どこかアナログなところがあるんだよな。例えば、人を部屋に招いた時にこの雑誌が置いてあるとか、あれってデジタルじゃ絶対に味わえない、紙の雑誌ならではの醍醐味だろ? 雑誌を手に取って、ページをめくる。そのリアルな感触やインパクトは、デジタルじゃ絶対に再現できねえんだ。もちろん、雑誌そのものはAmazonでも売ってるんだけど、これはジャンルでの売上トップにして存在感を示そうと思ったからなんだ。 ――まさに、バイク乗りが求めていた雑誌なわけですね。 岩橋:もちろん。それに、ショップも喜んでる。ほら、塗装やパーツを提案する時とかに、こうした雑誌があると商売しやすいわけだ。この塗装をしてみないか?という感じにね。うちの広告主は基本的にバイクショップだから、広告を見た読者がそのままショップに足を運ぶ。そこでリアルな繋がりが生まれるってわけ。そういう「人と人との繋がり」を大切にしてるからこそ、俺らは紙の雑誌にこだわってるんだ。ネット販売にも力を入れてるけどな。でもそれはあくまでも、紙の雑誌を補完する役割であって。俺らのスタンスは「リアルファースト」なんだよ。紙の雑誌という「モノ」を通して、読者とガッチリ繋がっていく。それが俺らのスタイルであり、信念なんだ。

「型」にはまらず、自分たちのやり方を貫く

――雑誌作りでも「規制」や「常識」に挑戦しているそうですが、具体的にはどんなことをしているんですか? 岩橋:もちろんだよ。他の雑誌みたいに「型」にはめられたくないんだよ。なるべく文章を減らして、いかにバイクをかっこよくみせるか、自分らのやり方を貫いてるんだ。それが他誌には真似できない、俺らの強烈な個性になってるわけよ。 ――そんな雑誌作りを支える体制があるわけですね。 岩橋:そう、最初に立ち上げを決めて編集長に電話した時には「はい」か「イエス」のどっちかで答えろから始まったんだ。会議だってZoomなんか使わないし、予定を決めてやったりなんかしない。思いついたら集合して、そのまま納得するまで朝になってもやってる。一度赤入れしてデザイナーに投げても、やっぱり変えようとかやりたい放題だ。担当してくれたデザイナーも有り難いよ。正月も元旦だけ休んで付き合ってくれたし。これも、いいものをつくろうという意志でまとまってるからだよな。創刊号で「GSX400E KATANA」を1台プレゼントしたけど、これも宮入編集長が、読者のためにって喜んで自腹を切ってくれたんだぜ。こないだのイベントで当選者が決まったけど、若いヤツが当選したんで本当に嬉しかったよ。
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一流カメラマンと組み、「他誌には真似できないクオリティ」に
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ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』

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