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「旧車會の雑誌」が新創刊、驚きの販売戦略とは…「俺らの読者は書店になんか行かねえんだよ」

一流カメラマンと組み、「他誌には真似できないクオリティ」に

愛旧ジャパン

約40年前、若き日の岩橋氏が表紙を飾った写真集

――その雑誌なんですが、全ページカラーなのは当然ですし、かつての『チャンプロード』みたいな、ダサさも排除してますね。 岩橋:写真がめちゃくちゃ大事だからな。うちの読者はさ、雑誌の文章なんかほとんど読まねえんだ。ページをパラパラめくって、カッコいいバイクの写真を見るだけで満足しちゃうんだよ。だから俺らは文字は最小限に抑えて、誌面の大半を写真で埋め尽くしてるわけ。その代わり写真のクオリティにはめちゃくちゃこだわってるんだ。例えば誌面に統一感を出すために、全ページの背景を真っ黒にしたりさ。細部まで計算し尽くしているんだよ。 ――とにかく、写真が美しく。まったくこのジャンルに興味ない人でも「カッコイイ」と感じる出来になってますね。 岩橋:この写真『チャンプロード』の時に仕事してたカメラマンが担当してくれたんだ。ところが、連絡してみたら今や一流のカメラマンになって企業の案件とか、誰でも知っている大スターの写真も多く手がけているというじゃないか。なので、名前は出せないけど、めちゃくちゃいい仕事をしてくれたよ。そういう一流の人たちと組んで、他誌には真似できないクオリティを追求してるわけよ。

「はみ出し者たち」に生きる希望を与える居場所に

――雑誌作りを通して、社会にどんなメッセージを伝えたいですか? 岩橋:俺は作品にメッセージを込めるのは嫌いなんだ。こないだ『ゴジラ-1.0』を観たんだけど、ずーっとなんか監督のメッセージがちらついて、早送りで観たよ。ただ、確かにメッセージはある。それは……ボケ防止だよ。昔を懐かしんでるだけじゃ全然ダメなんだよ。今も現役で暴れ回ってるつもりでいねえと、すぐボケちまうからな。だからこそ今回、俺はもう一度雑誌作りの最前線に立とうと決めたわけよ。 ――かつての『チャンプロード』の読者も既に初老、あるいは高齢者と呼ばれる世代にさしかかってますよね。 岩橋:そうなんだ。俺らの読者の中にはさ、歳を取って行き場のないオヤジもたくさんいるんだよ。住む場所もない、金もない、頼る人もいない。そういう人たちの中には、わざと罪を犯して刑務所に入ろうとする人もいるくらい追い詰められてんだよ。俺は、俺らの雑誌が、そういう社会の枠からはみ出た者たちの最後の「居場所」になれたらいいなって思ってるわけよ。規制とか常識とかに負けない、反骨精神を持った雑誌を作り続けることで、彼らに生きる希望を与えられたら、それが俺の勝ちだよな。
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ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』

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