ニュース

「焼肉ライク」がまさかの店舗数減。食べ放題チェーン「焼肉きんぐ」と分かれた明暗

“分散型食べ放題”が主流に

牛タン

焼肉の牛タン ※画像はイメージです

 原価の高い牛肉から低原価メニューへの“分散型食べ放題”が主流となっており、各店が食べ放題メニューの品目数の多さを競い合っている感は否めない。多彩な一品メニューなどに注文が分散されるからオペレーションは複雑化するが、費用の中で最も比重が重い原価が軽減されるのは店にとってありがたい。  お客としても肉ばかりは食べられないから、飽きがこないメニューで構成されているのは嬉しい。顧客満足度も高まり、店側の原価対策にもなっているから双方にメリットがある。また、これが食べ放題のお肉かと思うほど、隠し包丁を入れ柔らかさを増している店も多く、現場は顧客満足度の向上に向け苦労している。  また、タレでしっかり揉んでいるので濃い味になっており、白米にもよく合う。しかし、そのご飯も高品質米の供給不足で、価格が高騰している。とはいえ、お肉と比較するとまだ原価は低く、お腹にもたまりやすい。お肉の追加注文が減るのは当然なので、お店側はラッキーと思っているはずである。  季節ごとに旬の食材を入手し、その時々の絶品メニューを提供して、それらが絶妙な来店動機になり、何回通っても飽きのこないメニューの豊富さは、焼肉食べ放題人気が続く理由だ。こういった内容に価値あるサービスを、リーズナブルな価格で提供できるお店が生き残れるだろう。  また、人手不足や人件費が上昇する今、DXを推進し、タッチパネルのオーダーシステム・配膳ロボット・セルフレジなどを活用するのが標準だ。いくら食べ放題とはいえ、お客側も何度も追加注文をお願いしにくいものだが、タッチパネルと配膳ロボットによる商品提供で、店員を介さずに好きなだけ食べられるのは嬉しいことだ。

食べ放題店の価格設定は難しい

 焼肉は外食の中では高価な部類だが、食べ放題ならリーズナブルだ思う人も多い。しかし、あらゆるコストが値上がりする今、どの店も値上げせざるを得ない状況で、焼肉チェーン大手でも1人あたり食べ放題価格3500~6000円が標準である。  節約志向がより一層高まるなか、どこの店も色々なキャンペーンを実施し、集客策を講じて店を活性化させようとしている。女性が集まれば、店内が華やかになり、かつ男性客も集まるということで、女性だけの割引を実施している店は多い。一方でそれが「男性差別」だと批判の対象にもなるので難しいところだ。  また、それとは別に子供料金やシニア料金など年齢を基準に価格差をつけて安くする店がほとんどだ。お店側も採算を考えた上、価格設定するが、その価格差もけっこう難しい。利益を確保しなければ存続は困難だが、あまりお客が得をするだけの価格には設定できない。また、幼児を無料にしないとヤングファミリーが集客できないが、お店としては幼児だけで席を占領されては困るため、二律背反となっている。
次のページ
1人焼肉「焼肉ライク」が意外な苦戦
1
2
3
4
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
記事一覧へ
おすすめ記事