更新日:2025年02月25日 16:50
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異国で銃を突き付けられ「持ち金を全額出すか、売春婦として働くか、死ぬかを選べ」と迫られた女性の“思いも寄らない行動”とは

初めて提示された自己責任が伴う“自由”

「ホストマザーから『あなたに主張する権利がある。だから自分で選んで、自分で動くしかない』と言われ、最初は冷たいと思いました。ただ、『これを選択した場合のデメリットはこうだよ』と選択肢に伴うリスクを説明してくれたうえで、自己責任で自由で選んでいいよという考え方を示してもらった時、すごく解放感を感じました」 ホストマザーとの対話を経て、たどり着いたのは“いじめに対抗し得る英語のスキルを磨くこと”だった。英語力が高まり、悪口の内容がわかったことで、反論できるようになった一宮さんに対し、いじめていたクラスメイトたちの反応が変わり始めたという。 「自己主張できるようになって以降は周りが認めてくれるようになり、親友もできました。イギリスは、誰しも自己肯定感が高く、みんな自分に自信があるんです。日本だと、マジョリティーから外れることを極端に怖がりますが、イギリスでは人と違っても自信が損なわれることはありません。自分という個人が確立されているからこそ、違った価値観を受け入れることにも柔軟で寛容なのだと思います」

究極の三択を強いられた、東南アジア一人旅

一年間のイギリス留学を経て、価値観が変わり、大学生になった一宮さんは、東南アジアをバックパッカーとして一人で旅することを決意した。当然、母は大反対したがその反対を押し切って、日本を飛び出した。それが、一宮さんが生まれて初めて母に対して行った反抗だった。 「ドキュメンタリーで見るような飢餓に苦しむ子どもや、ストリートチルドレンが本当にいるのか東南アジアの貧困の現状をこの目で確かめたくて。シンガポールに住む父に会うための道すがら、バイトで貯めたお金を元手に色々な国を旅することにしました」 そしてタイからマレーシアの国境を越える際に乗った夜行バスで、事件は起こった。 「色々な人種の方がバスに乗っていましたが、夜中の2時ぐらいに突然『お前だけ降りろ』と言われ、タイ南部で降ろされたんです。その後、自家用車に乗せられて着いたのは売春街。車の外には、銃を持った5人ほどのタイ人がいて、『持ち金を全額出すか、売春婦として働くか、死ぬかを選べ』と言われました」 誰しもが死を覚悟する絶体絶命のピンチに対し、一宮さんは思いも寄らない行動を選択した。 「どうせ死ぬなら好きなことを言って死のうと思って、『お金は全部くれてやるから、絶対マレーシアに連れてけよ!』って怒鳴ってやりました。大人しい印象が強い日本人がキレた意外性もあってか、多分面倒だと思われたんでしょうね。お金は全部とられましたが、マレーシアの国境まで連れていってくれましたし、紆余曲折あって、父とも無事に会うことができました」 運が良かったと言えば、確かにそうだが、命懸けの瞬間でも、自らの意思で選択することを諦めなかったことが、その結果を導いたといっても過言ではないだろう。
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日本では家庭内の問題がすべて“親のせい”になってしまう
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歌手・音楽家・仏像オタクニスト・ライター。「イデア」でUSEN1位を獲得。初著『生きるのが苦しいなら』(キラジェンヌ株式)は紀伊國屋総合ランキング3位を獲得。日刊ゲンダイ、日刊SPA!などで執筆も行い、自身もタレントとして幅広く活動している
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