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ラブホにハマったきっかけは「不倫カップルの撮影」…“ラブホ1000部屋”を巡った女性が「“昭和ラブホ”に人生をかけたワケ」

時代ごとの社会背景が反映されているラブホテル

 那部さんによると、ラブホテルは昔に比べると縮小産業。特に昭和期に開業した豪華なラブホテルは、もはや絶滅危惧種だという。コロナ禍もあって廃業が相次ぐなか、那部さんは駆り立てられるように、写真を撮り続けた。 ——ゴージャスな内装のラブホテルがいったんは流行して、廃れていくのは、何か歴史的な背景があるのでしょうか? 那部:ラブホテルの歴史についてお話しするとわかりすいと思います。ルーツは江戸時代にまでさかのぼり、当時は出合茶屋(であいぢゃや)というのがあって、男女の密会の場として使われていました。時代は下って、昭和初期に円宿(えんしゅく)が誕生します。名称の由来は「1泊1円」からきていますが、時間貸しの概念ができたのはこの頃です。 戦後は、GHQが風俗を統制する一方、連れ込み宿がどんどん増えていきます。当時は粗末で狭い家が大半で、子供の数も多かったので、連れ込み宿は夫婦に人気でした。そして高度経済成長とともに連れ込み宿は発展していき、一般家庭にはまだ普及していなかった浴室、カラーテレビ、エアコンなどが備えられたことが、大きな魅力となっていました。 やがて競争化が進み、70年代には欧米への憧れを具現化したような豪華な外観と内装のホテルが増えていきます。ラブホテルを必要とする若者がちょうど団塊世代で多い背景もあり、どのホテルも常に満室。そんなホテルに、銀行もたくさんお金を貸してくれる時代でした。潤沢な資金、そして車や道路の発展もあり、本格的なラブホテルが全国各地に登場していったのです。

豪華なラブホテルが廃れている理由

——なるほど、今後の歴史をたどると、時代ごとの社会背景や人々のライフスタイルが色濃く反映されているんですね。 那部:そうですね。しかしここから、1985年の風営法改正により昭和ラブホの代名詞であった鏡の多用や、回転ベッドの新設が難しくなっていきました。平成時代以降は、派手な内装から衛生的なシティホテルっぽいものへと流行がシフトしていきます。
豪華なホテル

那部さんが訪れた豪華絢爛なホテルの一例

最近は、綺麗であることは当たり前、サービスやアメニティが充実していることが好まれるポイントとなり、昭和の豪華ラブホテルは「都市伝説レベルの遠い過去の遺産」というのが今の時代。それでも、奇跡的に残っていた昭和のホテルも、老朽化や時代の流れで日に日に姿を消しているのです。
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ラブホテルにあった回転ベッドを引き取ることに
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ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki

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