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[田舎へ移住]を成功させる新法則【その2】

東京・歯科技工士 → 静岡・漁師
加藤慶之さん(33歳)

最初の移住は失敗。再挑戦した地で、生涯の伴侶を得て――

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空手の有段者で力には自信があったが、「スポーツと肉体労働は違うと実感した」と加藤さん。仕事に慣れるには時間がかかったようだ

 歯科技工士として月25万円の安定した収入があり、東京都内に新築マンションも購入、仲間にも恵まれ、「仕事自体には不満はなかった」にもかかわらず、漁師に転身した加藤慶之さん。順風満帆な人生を捨て、あえて田舎暮らしを選んだ理由は、「都会の喧騒に嫌気がさしていた」からだ。

「東京生まれの東京育ちなんですが、渋谷のスクランブル交差点や渋滞など人混みがとにかく苦手。都会人の冷めた感じにも日々ストレスが溜まっていたので、30歳を機に決意しました。農業か漁業か迷ったんですが、自然の変化がより感じられる海での仕事を選んだ」

 そこで加藤さんは、漁業への新規就業者の発掘・就労を支援する「全国漁業就業者確保育成センター」に連絡を取り、漁業就業支援フェアに参加。東京や広島、仙台の会場に足を運び、そこであえて育成センターと関係が浅い岩手県の定置網漁を行うある漁業組合へ。

それは「就業支援制度で東北に行った人はいなかったので、先駆者として地盤を築いてみたかった」という野心から。訪れた土地は、

「海と川、山があり、夜8時には信号が点滅になるような静かな町」

 で、求めていた理想的な田舎だった。が、現実は甘くはなかった。

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「勤めた漁業組合は60代が中心で、考え方が古い部分もあった。何時間働こうとも手取りは月14万円以下。しかも、1月31日で定置網漁を終えると、漁師全員を一度解雇して、再開まで失業保険で食いつなぐというのがそこのやり方だったんです。毎日、酒を飲んでる先輩漁師もいっぱいいました」

 これも修業と自分に言い聞かせ、3年間はガマンしたものの、耐え切れずに、前述の全国漁業就業者確保育成センターに相談。昨年6月から、静岡県熱海市網代の「網代漁業」に勤務することとなった。

「網代は東京に近く、観光地でもあるので、ときどき渋滞があるんです。そんな中途半端な田舎さは不満なんですが(笑)。労働時間は8時間で、仕事仲間も30代中心。朝8時に漁を終え、朝日を浴びながら帰港するとき自然を感じます」

 地元に早く馴染もうと地域のイベントにも積極的に参加。そこには、運命の出会いも待っていて……。

「網代育ちの現在の妻とは、祭りで出会い、交際期間半年で結婚しました。こんなに早く生涯の伴侶が見つかるとは思ってもいませんでしたが、網代に骨を埋める覚悟ができました(笑)。噂話はあっという間に町全体に広まるようなところだけど、逆に言えばそれだけ地元住民同士のつながりが深いということ。この信頼関係は安心だし安全をくれる。東京では絶対に考えられないですよね」

◆成功の法則
一次産業は、手厚い支援事業を活用せよ

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大型定置網漁では、今の季節、マサバ、マアジ、ホウボウ、スルメイカなどが取れる

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「田舎はすぐに噂が広まりやすいから、付き合っていることもすぐにバレました」(笑)




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