更新日:2022年08月19日 10:06
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ダラダラとかっこ悪く生きていくことのススメ

― 週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ― ドン・キホーテのピアス BS朝日で『熱中世代』という番組の司会を進藤晶子さんと一緒にしています。オンエアは、日曜朝8時なんですが、精神科医で作詞家の「きたやまおさむ」さんが何回もゲストで来てくれています。  きたやまさんは、「かっこよく去る」ということに一貫して反対しています。かっこ悪く、ダラダラと、粘りながら居続けてもいいんじゃないかと言うのです。  例えばと言って「鶴の恩返し」の話を持ち出します。  あの時、鶴は自分の正体を見られたから、去っていく。それはかっこいいんだけど、人生はそんなもんじゃないんじゃないか。そんな風に去れたら素敵かもしんないけど、人生、そうはいかないと思うと言うのです。  じゃあ、どうすればいいんですか?と問いかけると、「だから、居座るんです」と、楽しそうに答えられました。  鶴は去っていかない。見られて正体がバレても居座る。ただ、ダラダラと居る。そういう関係は面白いときたやまさんは言います。  そう聞いて、いきなり物語のイメージが膨らみました。  夫の「よひょう」は、女房の「つう」の正体を知った後も、なんとなく一緒の生活を続けます。で、酔っぱらうと「お前は人間なの? それとも鶴なの?」なんて聞くのです。  つうのほうも「両方だし、両方でもないし、私も分かんないのよ」なんて困りながら答えるのです。  んで、また、自分の羽根で反物を織り始める姿を見て、よひょうは、「やせ細ったお前は、美しいのか? 醜いのか?」と混乱するのです。  つうは、そう聞くと「やせてガリガリだけどお金はある私と、見事に美しいけれどお金がない私。どっちを選ぶ?」なんていう究極の選択を迫るのです。  おお、これはまるで、「スタイル抜群で美人のモデルなんだけど性格は最悪でバカか、性格は最高でものすごく賢いんだけどデブでおブス。どっちを選ぶ?」という究極の選択の古典そのものではないですか。
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かっこよく去った後に、残された人間は?
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ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

『週刊SPA!』(扶桑社)好評連載コラムの待望の単行本化 第19弾!2018年1月2・9日合併号〜2020年5月26日号まで、全96本。

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※「ドン・キホーテのピアス」は週刊SPA!にて好評連載中

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本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録

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