舞台で「人狼」ゲームをやる「人狼TLPT」とは?【後編】
『人狼』というパーティーゲームをご存知だろうか? プレイヤーは村人側か狼側のどちらかに割り振られ、村人の中に紛れ込んだ狼を、推理して暴いていくゲームである。ここ2年ほどで各地でイベントやオフ会が多くみられるようになって、もっかちょっとしたブームになっている。
ただゲームをプレイするだけでなく、ショーとしての、“見せる『人狼』”が増え始めている中、その先駆けとして昨年秋に誕生した人狼の舞台『人狼ザ・ライブプレイングシアター』(人狼TLPT)に注目したい。“村に人の姿をした狼が紛れ込んだ”という設定で役者たちが村人を演じながら『人狼』をプレイし、毎回筋書きのないドラマをアドリブで作り上げていく舞台。小劇場の公演ながらも、昨秋の初演からすでに3回の公演を行い、リピートする固定ファンを着実に増やしている。その人気の秘密とは? プロデューサーの桜庭未那氏と、看板役者の松崎史也氏(マドック役)に直撃した。
⇒【前編】ゲームである『人狼』を舞台でやる意味
◆舞台で“見せる”『人狼』と、ゲームとしての『人狼』の違い
『人狼』ゲームをプレイする際は、自分が人間側ならば、嘘をついていそうな怪しい人を処刑し、狼側ならば、残しておくと狼側の嘘を暴いてきそうな厄介な人を噛み殺す。だが、場が舞台となると、“この人はアドリブが面白いから残しておいた方が劇が面白くなる”という観点から処刑や噛み殺しを避けることはあるのだろうか。
マド:意外とそれがあるようでないんですよ。『この人、今日しか出演しないからさすがに初日に噛み殺すのはやめよう』とかは多少ありますけど(笑)、基本的にはそこはあまり考えずに処刑or噛み殺しています
桜庭:とはいえ、強いて言えばですが、マドックは多弁で場をリードしていくプレイスタイルだから、結構最後まで残されやすくはなってきていますよね
マド:そうですね、多少は。でも、それも狼になる人によりますね。全然何も気にせず噛んでいく人もいますし。余計なことを考えずに、真剣勝負をしたほうが質の高いゲームになります
桜庭:また、あくまで“演劇”でもあるので、処刑されるシーンなどはしっかり演じてもらっています。誰だって死にたくないから、ゲームとはいえちゃんと抵抗するし、村であるという世界観は壊したくない。“命の大切さ”と“多数決の恐ろしさ”を第一に心掛けています
マド:ほかに、プライベートでやる『人狼』と舞台との違いといえば、明らかに狼である証拠が出揃っていても、あの手この手で一歩も引かない点。大暴れして観客を巻き込んだ空気を作ると、意外と踏ん張れることもあります(笑)。エスターという役がいるのですが、彼女はいつも情に訴えて『どうして信じてもらえないの……』と泣き出しますね(笑)。こういうときはたいてい嘘ついているのですが、なんか信じたくなる気がしてしまう
桜庭:こういった、人の癖やパターンが推理材料になる“メタ推理”は現実のゲームでも起こりがちですが、『人狼TLPT』は舞台公演に稽古に、人狼を異様な回数プレイしまくっているため、いくらでも予想を覆す返しをしてくることがあり、『こいつは性格的にこうはしてこない』というのが影響することはあまりないみたいです
◆役者は、演技テストではなく「面接」で選ばれる
この『人狼TLPT』、小劇場にも関わらず、桜塚やっくんや、元AKB48の米沢瑠美、元アイドリング!!!の加藤沙耶香、元モーニング娘。の小川麻琴などといった著名な芸能人がたびたびゲスト出演している。これについて、桜庭氏は「人狼ゲームのブームの力が大きい」と語る。
桜庭:実は、有名な方でもこちらから積極的に頼み込んで出演交渉をしたことはないんです。『人狼』が流行り始めていて、アンテナが高い人なら知っているというのも大きいかと思います。ただ、どんなに著名な方でも、必ず1対1で面接をして、会話の切り返し方や理解力などを見て、キャストとしてお願いできそうかを判断しています。就活みたいですが(笑)
マド:稽古場では、美女アイドルたちと『人狼』するだけなので、最高に楽しいです(笑)。稽古期間中は頭使いすぎてみんな激痩せしますが(笑)
桜庭:稽古場でみんなチョコやケーキを大量に食べているのにね(笑)
現在、すでに10月まで公演が決まっている『人狼TLPT』。同じような形式で『人狼』と舞台を掛け合わせた対抗馬も出てきているという。しばらくブームは続きそうだ。 <取材・文/朝井麻由美>
●人狼TLPT 公式HP
http://7th-castle.com/jinrou/
※次回公演は4月24日~29日。前売券好評発売中! また、6月13日~16日の公演についても発表されている。詳細はHPまで
●ドイツゲームスペース@Shibuya
http://game.cotori.net/
人狼TLPTのゲームレクチャーと監修を担当するボードゲーム店
ハッシュタグ