被災地・石巻の元仮設公衆浴場が地域活性化の拠点に
がんばらない』(集英社)などのベストセラー本で知られる鎌田實医師のトークなど、さまざまなイベントが行なわれる場ともなっている。
「先日は、パントマイムアーティストの藍義啓さんに来てもらいました。その道30年の本格的なパントマイムはとても見応えがありました」(同)
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藍氏は、イタリア国際演劇祭の総合グランプリを受賞したこともある実力派。最近は、タレントや俳優を養成する専門学校の講師も務めているという。
「藍さんは、パントマイムだけでなくバルーンアートもしてくださって、ショーを観に来た近所の子どもたちも大喜びでした」(同)
ジャズボーカリストで、2011年度のスポニチ文化芸術大賞優秀賞を受賞した澄淳子氏も、スペース千人風呂をよく訪れ、歌声を披露してくれるのだという。「澄さんとは以前から知り合いだったのですが、2012年の2月、『東北で被災者の方々のために歌いたい』と彼女から相談がありまして。それ以来、定期的に千人風呂や他の石巻市周辺に来てくれています」(同)
震災3年目となる今年も澄氏は石巻を訪れ、スペース千人風呂では3月22日にライブを行うという。
また、イベントのない日もスペース千人風呂には人々が集まってくる。
「特に土曜日は、近所のおばちゃんたちが来て、皆でお茶などを飲みながらおしゃべりしていますね(笑)。石巻市中心部の空洞化を止め、地域を何とか盛り上げていくには、みんなで集まれる場所、楽しめる場所が必要です。JR石巻駅や市役所大通りからも近いこの地区は、もともと石巻で最も賑わっていた場所でした。しかし、津波であちこちの店や住宅が浸水被害に遭い、震災以前の3分の1にまで住民が減ってしまったのです」(同)
市中心部の空洞化は津波の影響だけでなく、あるべき復興の姿が明確にされないことも大きな要因だと熊谷氏は言う。
「石巻市を復興させよう! とは市長や役所も言っていること。でも『具体的にどのような形で石巻市を復興させていくべきかのビジョンがない』と住民たちは不満を抱えています。そうこうしている間に、津波被害のなかった郊外に県外資本のショッピングモールができ、客を取られてしまう。人々が集まって地域が活性化するような場作りが復興政策として必要だと思います。いくら道路やハコモノをつくっても、地域が盛り上がらなければ本当の復興とは言いがたい。市外・県外から、何か面白いことをやってくれる人々がもっと来てくれると嬉しいですね。石巻出身の若者の一部が震災後に少しずつ地元へ戻ってきていますが、 彼らとも今後一緒に協力しあえたら、と考えています」(同)
<取材・文/志葉 玲>
「石巻では、市内中心部の空洞化が深刻な問題です」そう語るのは、コミュニティスペース「スペース千人風呂」スタッフの熊谷宏氏。かつては都内に拠点を置く国際協力NGOの職員として、震災直後から被災者のために仮設の公衆浴場「千人風呂」を宮城県石巻市中心部で運営。NGOを退職した後は都内の住宅を引き払って石巻市に移住し、2012年7月まで被災者や復興支援に訪れたボランティアなどに入浴サービスを提供してきた。
浸水被害に遭った市内住宅の水回りがおおかた修理され、市内の銭湯が営業を再開したことを機に、「千人風呂」は仮設浴場としての活動を終えた。ところが熊谷氏は地元商店街の町内会の人々に引き留められ、石巻市に残って活動を継続している。
「千人風呂は入浴に訪れる方はもちろんのこと、近隣に避難・居住している子どもからお年寄りまで幅広い年齢層の方々が気軽に訪れて、息抜きをする場所となっていきました。『こうした場が地域の商店街には必要だ』と町内会の方々が言ってくれたのです」(熊谷氏)
現在「スペース千人風呂」では、ロックなどの音楽ライブ、NPO代表で『
『がんばらない』 本当に豊かな生、また死とはなんだろう。延命だけの治療には批判的であり、患者の側に立った医療を目指している名物医が、日々患者やその家族に接する中で綴った、感動エッセイ |
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