『ポケモン』制作陣がスマホ版ゲームリリースで成功したワケ【後編】

スマホゲーム市場が大きな盛り上がりを見せる中、家庭用ゲームでヒット作や話題作を手掛けたクリエイターたちが、続々と新たなスマホゲームを生み出している。彼らは、どのような理由でスマホゲームを手掛けるのか。最新の注目タイトルを手掛けた、3人のクリエイターに話をうかがった。

◆『ポケモン』で知られるゲームフリークの新たなチャレンジ

『ポケットモンスター』シリーズを手掛けるゲームフリークが、初のパブリッシング作品としてニンテンドー3DS(以下、3DS)でリリースした『ソリティ馬』。競馬好きのスタッフがアイデアを出し合い、完成させた『ソリティ馬』は、「日本ゲーム大賞2014」の特別賞を受賞するなど、高い評価を獲得。基本プレイ無料で遊べるスマホ版も配信中だ。発起人の一人である田谷正夫氏に開発秘話などをうかがった。

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――『ソリティ馬』のどこが、ユーザーの方に受け入れられていると分析されていますか?

ソリティ馬

ソリティ馬

田谷:いくつかありますが、核にあるソリティア(ゴルフ)のシンプルな心地よさ。短い中にもリスクとリターンを考えた立ち回りが要求されるレースのバランス。ついもう1レース、もう1頭と育てたくなってしまう、テンポやプレイ感の心地よさ。ウマ、人物ともに可愛らしいキャラクター。まさにこのゲームのために作られた、心躍る素晴らしいゲームサウンド。ゆるくてバカバカしい中にも、意外といい話が混じっていたりする会話劇とか世界感。これらの要素が受け入れられたのではないかと思います。

――『ソリティ馬』のスマホ版をリリースすることになった経緯を教えてください。

田谷:詳細な経緯というのは、じつは自分では把握していなくて。スマホ版のプロジェクトが始まったのは、上層部からの指示のような、打診のような、そういうものがあったためです。

 3DS版のリリース後、しばらくするとプレイしたユーザーの方々の中から「これはスマホで出してもイケるのでは」という声をちらほらと聞くようになりました。ただ、それよりも前に、上層部から「スマホ版、作ろうよ」と言ってもらったんです。驚きましたが、「また新しい挑戦をさせてもらえるんだ」と思ってすぐに「やります!」と答えしました。

――コンシューマーゲームとスマホゲームを開発するうえでの違い、スマホゲームならではのよかったところ、たいへんだったところなどがありましたらお答えください。

田谷:ゲームのバランスを考えるのがたいへんでしたね。スマホゲームでヒットを狙おうというからには、ゲーム機を買ってまでプレイしない方々にも楽しんでもらえなければいけません。とはいえ、3DS版で熱心に遊んでいただいた方々にも満足のいくものを提供したくて。

 また、技術屋としてはとにかく沢山ある機種固有の問題に泣かされましたね。というか、機種固有の問題には、今後も泣かされることと思います(苦笑)。

――3DS版は有料タイトルですが、スマホ版を基本プレイ無料にした理由を教えてください。

田谷:世の中の趨勢を見る限り、明らかにそのようなモデルのタイトルが存在感を増していますので、自分個人や、会社のためにも、そういったゲームを手がける経験値を積んでおくことは重要だろうと考えました。

 ただしこれは、必ずしも基本プレイ無料のゲームを今後も作り続けるという話ではありません。これから先も、ゲームのビジネスはさまざまに形を変えながら続いていくことと思いますが、今、大きな盛り上がりを見せている“場”から目を逸らしていたら、これから先も変化に対応できない個人、組織になってしまうのではないか、という危惧があって、それはダメだろう、という感覚です。

 また、3DS版も無料の体験版を配信したことがセールス拡大の起爆剤となったので、「無料で提供して体験していただく」ということの大切さを痛感したことも大きな理由です。

――今後、スマホ版の『ソリティ馬』でチャレンジしたいこと、行ってみたい施策を教えてください。

田谷:3DS版の公式大会“ゲーフリカップ”のように、皆で参加して盛り上がれるイベントを何としても実施したいと思っています。

――田谷:さんにとって、アプリゲームはどのような存在でしょうか。スマホ版『ソリティ馬』の開発前と開発後で認識がかわったことなどありましたら教えてください。

田谷:スマホ版の『ソリティ馬』の開発を境にして認識が変わったということはありませんが、ずっとコンシューマーをやってきた立場から見ると、常に持ち歩く電話で、どこでもダウンロードできて、基本無料で遊べるという、この「試しに始めてみるまでのハードルの低さ」が、とにかく脅威だな、と感じていました。

 そんなふうに思い始めてから数年で、世の中は基本無料のゲームであふれかえって、もはや過当競争と言って良い状況に突入してしまいましたが、どうも“似たようなゲームばかりになっている”ような感覚もあります。

 ヒットタイトルのいい部分を吸収しようという考えは、コンシューマーゲーム開発の中にも存在しますし、ある意味では当然のことと思います。ただ、それだけを効率よくやっていても、もう目立つことは難しいのではないかな。

 自分も含め、コンシューマーゲームで育って、作ってきた立場の人間が、これからもアプリを作るケースが増えていくことと思いますが、そこでがんばって、ほかには無い要素を盛り込む挑戦を繰り返すことで、“新しい何かが産まれればいいな”と思っています。

【田谷正夫氏】
ゲームフリークのプログラマー。『ソリティ馬』や『ポケットモンスター』シリーズなどに携わる。本作ではディレクションを担当。

【ソリティ馬】
ソリティア(ゴルフ)と競馬ゲームが融合した意欲作。基本プレイ無料(アイテム課金制)で手軽に楽しめる。詳細は、http://www.solitiba.jp/

取材・文/黒田知道
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