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戦場カメラマン渡部陽一 アフガン駐留米軍に従軍した

11/1発売の週刊SPA!「アフガン駐留米軍の現実」は、渡部陽一氏のアフガン従軍記である。以下は、その一部を抜粋したものだ。 渡部陽一1アメリカ同時多発テロの首謀者ウサマ・ビンラディンと国際テロ組織・アルカイダをかくまうタリバンに対しての「報復」として始まったアフガニスタン紛争――。節目の10年を迎える現地を取材するため、私は9月10日、カブール国際空港に降り立ちました。 私がEMBED(米軍従軍記者)として帯同した部隊「チャーリー・カンパニー」は100人規模の歩兵中心の編成で、武装勢力の排除と情報収集を目的にアフガニスタンの地方部をパトロールするのが主な任務です。米軍のヘリで移動したカンダハルは、タリバンの本拠地。死と隣り合わせの最前線です。 渡部陽一2パトロールは20人程度のチームで毎日30kmほどのエリアをチェックするわけですが、至るところにタリバンによるブービー・トラップ(仕掛け爆弾)があり、金属探知機を持った先頭の兵士の足跡を慎重に追い、歩を進める……神経を著しく消耗する日々が、いつ終わるともなく続きます。 任務では精悍な「兵士」にしか見えずコワモテだった彼らも、キャンプへ戻ると無邪気な横顔を見せます。下ネタ混じりのジョークを連発し、皆よく笑う……兵士の大部分は20代前半で、なかには17歳という「少年」もおり、むしろこちらが本当の姿なのでしょう。 「日本には保険はあるのか?」 日本人従軍記者の私に対して、彼らは口々にこう問いかけ、「アーミー(軍)に入ると保険に入れるんだ!いいだろ?」と続けました。 渡部陽一3兵士の多くは貧困層の出身で、大多数が結婚しており、子供を2、3人抱えている兵士が目立ちます。「高校はリタイヤした」という兵士も多く、学歴のない彼らが普通の仕事を得て家族を養うのは難しい。 そんな貧困層の若者の受け皿となっているのが米軍で、わずか3か月ほどの訓練で兵士に仕立てます。彼らのような若者が本国で働いた場合、月収は2000ドル程度。これに対し、アフガニスタンで軍務に就けば5000ドル超と倍以上にもなります。 (中略) “仕事”として軍に入隊した貧困層の若者は、死線を共にくぐり抜けた仲間とはファミリーのような絆で結ばれます。アメリカ人は総じて愛国心が強い。こうして、ストリートにたむろしていた若者は、屈強な兵士へと変貌するのです。戦場の経験で彼らの愛国心はより強固なものとなっていく。だが、「生活のため」に軍務に就く彼らには、「アフガンのため」の復興といった考えなど入り込む余地はないのです。 取材・文・撮影/渡部陽一
週刊SPA!11/8号(11/1発売)
表紙の人/吉高由里子

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