更新日:2016年07月29日 19:41
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会社員が全力で舞い踊る「会社対抗のど自慢大会」の熱狂 超高層ビル一棟がフェスに!?

三井ビルの広場が「興奮のるつぼ」と化す

「この大会に出られて感無量です。このために会社を移しましたから……」。昨年、会場の観客席でたまたま隣り合わせた男性、予選80組を勝ち抜いた決勝20組が鎬を削るステージを眩しそうに見つめながらつぶやいていた……。  今年で41回目を迎える、新宿の知る人ぞ知る名物イベント「新宿三井ビルディング会社対抗のど自慢大会」が8/26(水)から始まる。新宿超高層ビル街の一角、普段はOLや会社員がくつろぐオフィスビルの下のなんの変哲もない広場が、3日間に渡るこのイベントで「熱狂のるつぼ」と化す。 ◆同じビルのテナントで対抗歌合戦  のど自慢大会は例年8月の最終週の水~金曜日の夜に開催され、各日40組が出演する2日間に渡る予選と、そのなかから選ばれた20組が優勝を争う決勝戦の計3日間で行われる。大会の歴史は長く、三井ビル竣工の1974年からテナント対抗で行われており、現在のカラオケとは違い、当時は本格的なビッグバンドが演奏、それをバックに会社員たちは喉を鳴らしたという。  このイベントの出色なところはその“本気度”。三井ビルの1階の広場にドーンと組まれたステージ。単なるカラオケを遥かに凌駕した音響、プロによる凝りに凝った照明、プロの司会者、審査員。その舞台で三井ビルに入居するテナントごとの代表者たちが嗜好を凝らした歌を披露する。 「のど自慢」と銘打ってはいるが、歌、ダンス、パフォーマンス等は“本気”の演出だ。アイドル、J-POP、ロック、演歌からアニソンまで会社員たちはオフィス街にしつらえられたステージで、日頃の成果をいかんなく披露する。 ⇒【写真】はコチラ nikkan-spa.jp/?attachment_id=922168(昨年大会の様子)  劇団四季のミュージカル風があれば、損保会社の演歌を唄うイケメンの衣装は着流し、花柳糸之社中よろしく和装のバックダンサーが出てきたり、高杢の低音も忠実に再現する某大手ゼネコンによるチェッカーズ、若手男性社員がダンスから髪型まで完コピする嵐、なぜか片方に目線が入っているチャゲアス、歯科助手5人組のモノノフ、デザイン会社のモー娘。は決勝大会でゲスト審査員だったモー娘。OGと奇跡の競演を果たしたり……。

名物・シュレッダー紙吹雪。「お嫁サンバ」の歌を花道に定年退職する次長への愛が爆発

 また応援団も見どころだ。社員総出でステージ前に陣取り、会社のシュレッダーで作った大量の紙吹雪を夜空に撒き散らす。ある会社は今年で定年を迎える出演者である次長のために、「37年間新宿に優しさと愛と夢をありがとう!」と次長の名前と披露する曲名入りのお揃いのタオルを高々と掲げて揺らす……。大手銀行は「振込み詐欺にご注意ください」の幟での応援など、見るものを飽きさせない。

演者も応援団もヒートアップ

 記者はここ2年ほど、こののど自慢大会を観戦しているが、会社員が熱狂する姿には胸が打たれるものがある。社内での予選、仕事中には決して見せない素顔、就業時間後の地道な練習、取引先の人にバレるかも知れないというリスク、社員総出でシュレッダー紙吹雪をつくる姿……ここに至るまできっと数々の葛藤やドラマがあったのだろうと「勝手に想像する」記者を含めた観客たち。すべてが一体となった「三角広場」はいつしか感動の渦に包まれる。  前述の男性はこのステージを偶然見て感動、自らが経営する会社を三井ビルに移したという。何年ものテナント順番待ち、嵩む費用。念願叶って大会に出たが、予選落ち。しかし「社員の応援は嬉しかったし、本当に楽しかった。また来年も出たいですね」と捲土重来を誓っていた。  無味乾燥な高層ビル街で、オトナたちが全力で歌い舞う、オフィス街の“夏フェス”、今年はどんな感感動を呼んでくれるのか? あの社長今年もエントリーしているのか? 今年も会場に足を運ぼうと思う。 ●「第41回三井ビルディング会社対抗のど自慢大会」 8/26(水)~8/28(金)18:15~21:00 新宿三井ビルディング55HIROBA

特別ゲストの「そえりゅう」こと副島龍之介さんは損保会社の社員で2年連続の優勝者。三井ビルディングではアイドル的存在

8/26(水)、27(木)予選大会(各日40組→10組が決勝大会へ) 8/28(金)決勝大会(予選を勝ち抜いた20組による決戦) 取材・文・撮影/遠藤修哉(本誌)
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