「女装したい人たちを幸せにしたい」世界初ジェンダーフリー歌劇団の誕生秘話――女装小説家・仙田学
「お母さんを尊敬している。守ってあげたい。幸せにしてあげたい」
「他のみんなも幸せにしてあげたい。劇団員も、お客さんたちも」
「女装子歌劇団」のリーダー、くりこさんの声は力強かった。2018年1月6~14日に新宿シアターモリエールで旗揚げ公演を行う「女装子歌劇団」は、30人の女装男子による、世界初のジェンダーフリー歌劇団だ。
圧倒的なエンタメ集団であると同時に、世の中から差別や偏見をなくすことを目的として結成された。その結成までのいきさつは、前回の記事でお聞きした。
今回も引き続き、リーダーのくりこさんに、差別や偏見をなくしたいという強い願いはどこからくるのかをお聞きする。
くりこさんは、男ばかりの5人兄弟の3男として、女手ひとつで育てられた。決して裕福とはいえない家庭で、トタン屋根の狭い家に住んでいた。暗がりに建っているせいか、何度もダンプカーが突っ込んできたという。
「強く記憶に残っているのは、お母さんの姿です。いつも優しくて、強かった。働きながら、5人の男のコたちの育児と家事をこなしていたんですよ。土曜日には学校が午前中で終わるんですけど、お母さん職場から自転車で片道20分かけて家まで戻って、私たちのお昼ご飯を作ってからまた20分かけてもどってたんですよ。休んでないじゃんお母さん!って」
お母さんを守ってあげたい。お母さんを助けてあげたい。そんな思いが、くりこさんの中で膨らんでいったという。
小学生の弟が、給食費を持っていくのを忘れたときに、手の甲にマジックで「集金」と書いて戻ってきたことがある。担任の先生に書かれたのだと。
何度もダンプカーが突っ込んできた実家
※女装子歌劇団の公演の詳細はこちら。
この連載の前回記事
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