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都知事選など「小池百合子、憲政史上初の女性宰相」へのバネにすぎないのだろう/倉山満

都知事選など「小池百合子、憲政史上初の女性宰相」へのバネにすぎないのだろう

言論ストロングスタイル

これまで、都知事選に限らず「まだマシなのは誰か」が投票基準だった人は多いはずだ。しかし、閉塞感の打破には「ポスト安倍」を見据えた判断が我々に求められるのだろう 写真/時事通信社

 東京都知事選挙で、小池百合子知事が圧倒的な支持を得ているらしい。  この御仁、コロナ騒動で何をしていたのか誰もが忘れていたが、東京オリンピックの延期が決まるや突如として連日メディアに登場、MXテレビなど「小池広報チャンネル」と化す有様だった。  不用意に「ロックダウン」を口走り大混乱させた後、「国が出さないなら都が金を出す」とのパフォーマンスで雀の涙ほどのバラマキを行った。確かに補償金を出したのは評価すべきだが、同時に、その前の大混乱の原因を作ったのが誰かも忘れてはなるまい。  これは安倍晋三首相も同じなのだが、疫病対策の要諦をわかっているのか。人心を鎮めることであり、金はその最も重大な道具にすぎない。札束で頬を殴るような渡し方をして国民が反発しても、為政者の責任だ。それでも多くの国民は何の法的権限も無い「自粛要請」に従った。日本が欧米に比してコロナ禍の被害者が少ないのは国民のおかげであり、アジアの中で犠牲者が多いのは政治家と官僚の責任であると自覚すべきだろう。  そんな感謝の念など小池知事には微塵も見えないが、一方で選挙には盤石の姿勢で臨んでいる。都議会が閉じ、選挙戦が始まる直前まで、自粛を続けさせた。東京アラートなど、「やってみたかった」以外の理由がまったく見いだせないが、自粛を続けさせるのには大きな意味がある。対立候補の活動を阻止するためだ。人々に恐怖を煽り、あらゆる活動を自粛させれば、当然ながら政治活動は制限される。ならば、露出度が圧倒的な現職が有利に決まっている。  小池知事は政治経歴において一度も公明党に喧嘩を売ったことが無いのだが、今回は二階俊博自民党幹事長も味方につけた。これで敵対する自民党東京都連も抑えた。さらに、野党の支持基盤である労働組合の連合も切り崩した。組織票では圧倒的である。  噂される学歴詐称疑惑も、どこ吹く風。小池都知事の目論見は、都知事選挙など「憲政史上初の女性宰相」への跳躍台にすぎないのだろう。もっとも、政界の一寸先は闇、3年前も土壇場の決心がつかずに政権を逃した。何が起こるかわからないのが世の中だ。  今回、小池氏以外に4人の有力候補がいる。その中で、NHKから国民を守る党(ホリエモン新党)の立花孝志氏は路線が独自すぎるので論評しがたいが、他の3人の動向は注目に値する。  野党統一候補に名乗りを上げたのが、元日弁連会長の宇都宮健児氏だ。宇都宮陣営は2位死守が至上命題だ。ただ、共産党が支持基盤なので立憲民主党と社民党は好意的だが、国民民主党は自主投票で事実上の敵対的中立、連合に至っては離反して小池陣営に走ってしまった。  都知事選は、特に今回の選挙は、国政の縮図だ。仮に自公が応援する小池が1位、立民ら野党連合が推す宇都宮が2位になったとしよう。国政の構図そのものだ。
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なぜ立憲民主党幹部は、増税に固執するのか
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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