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東京アラートに「やってみたかった」以外の理由があるのか?/倉山満

「東京アラート」に、「1回やってみたかった」以外の理由があるのか?

言論ストロングスタイル

意味がわからないまま始まり、理解できないまま終わった「東京アラート」。このままお人よしを続ければ、日本国民は身勝手なトップたちに地獄へ落とされてしまうだろう 写真/時事通信社

 コロナ禍を、日本は上手く乗り切った方だろう。これだけ政治家や官僚が無能なのに、国民の善良さだけで死者を抑えた。政府が無能の限りを尽くしたにもかかわらず、国民はよく耐えた。もし日本の首相が安倍晋三ではなく台湾の蔡英文総統だったら、死者がゼロだったかもしれない。もっとも、蔡英文のような立派な指導者が総理大臣になれないのが、日本の政治の構造上の問題なのだが。  だが、善良さも度を越えると単なるお人よしだ。安倍首相あるいは小池百合子東京都知事が医学的知見に基づいて疫病対策を行っている、国民に自粛を求めていると、多くの国民は信じて疑っていないだろう。だったら、なぜ緊急事態宣言の解除基準を考えていなかったのか? 小池都知事の「東京アラート」に至っては、「1回やってみたかった」以外の理由があるのか?  その証拠に、都議会が終わり、都知事選挙が始まるのに合わせて、東京アラートは解除された。国会閉幕に合わせて、ステップ3に移行するとも。最初から結論が政治の都合で決められて、医者の言うことなど聞いていないではないか。  今のところ、コロナ禍の最大の受益者は安倍首相と小池都知事だ。小池氏は支持率70%、都民への自粛の強要により、対立候補の選挙活動を封じた。  安倍首相もコロナ禍が始まる前は、桜を見る会に反社会的人物を招待した疑惑、菅原経済産業相と河井法相の連続辞任、検察人事で火だるまだった。ところが、「コロナ休戦」に持ち込み、批判を封じた。これだけ無能な政権運営をしているのに、まだ支持率が4割近くもある。菅直人首相が東日本大震災の時に原発の恐怖を煽りまくって政権延命をはかったが、安倍政権の手口はそれ以上だ。権力への執念、舌を巻く。  こうした態度に、二階俊博自民党幹事長や公明党も距離を置く。昨年までは聞かれもしないのに「安倍4選」を口にしていたのに、今は「4選は無い。早期解散の状況にもない」と安倍首相の解散権を封じた。公明党は要所で財政政策を批判し、多くの疑惑にも注文を付ける。人心は安倍首相から離れている。  そんな安倍政権を、財務省と麻生太郎財務大臣が支えている。安倍首相は無能で言いなりになる岸田文雄政調会長に禅譲したいらしいが、確かに派閥の数で言えば、安倍・麻生・岸田の三派が組めば自民党の過半数だ。財務省は他全員を敵に回して叩きのめすのが趣味のようなところがある。政官界で安倍首相は孤立無援と化しているが、財務省だけが支えて延命できれば、他の政治家や官庁に己の力を誇示することができる。それに、「2度も消費税を増税してくれた総理大臣」なのだ。財務省からしたら、忠犬ハチ公のようなものだ。扱いやすい飼い犬だと思えば、無下に捨てることも無い。  安倍首相と側近は、一刻も早く国会を閉じたいと思っている。国会が閉幕すれば、河井前法相夫妻の逮捕は免れられないだろうが、野党の追及する場が無いし、マスコミも取り上げにくい。給付金が届けば支持率も上がるだろうし、その瞬間に解散総選挙に持ち込めば政権を維持できる。3年前のモリカケ騒動を乗り切った再現を狙っているのだ。
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安倍政権のバラマキは国会を開きたくないだけだ
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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