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なんでもかんでも文字で確認したがる日本人の習性

鴻上尚史

なんでもかんでも文字で確認したがる日本人の習性

 さて、先週の続き『二十歳の原点』は「はたち」「にじゅっさい」、「日本」は「にほん」「にっぽん」のどっちでもいいだろうという話からです。  先週のことを詳しく書くと、アジア・太平洋戦争中に、日本軍陣地を占領したアメリカ軍は、「あまりにも日本軍は命令文書を多く残している。『10時に移動せよ』という文書の次に『10時に移動せよと通達したが、12時に変更する』という文書や、さらに『12時と通達したが、14時に変更する』なんてのもある。これは、どれが本当の命令か分からなくするための謀略ではないのか」と混乱しました。  細かな訂正をいちいち文書にすることが信じられなかったのです。  事実はもちろん、日本軍は本気で、「命令はすべて文書にする」という原則に忠実に従っているわけです。  ここまで厳密な民族なのに、「日本」は「大日本帝国万歳!」と叫ぶ時は、「にっぽん」で、淋しく「……このままじゃあ、日本は負けるな」と呟く時は、「にほん」と言うという、じつに、いい加減というかおおらかな民族なのです。  大切なのは「日本」という文字であって、読み方ではない、ということですね。

必ず電子辞書をひく日本人

 これが、名前の届け出の時に「使える漢字は制限されているが、読み方は自由」につながります。 「宇宙」と書いて「コスモス」君が成立するのは、文字があれば日本人は納得するのです。  イギリスで英会話学校に通っている時、非英語圏のヨーロッパ人と日本人が英語学習の時に根本的に違っている点がありました。  それは、「知らない単語を電子辞書で確認するかどうか」です。  例えば、「diagnose」という単語が出てきて、先生が英語で、「病気や問題の原因を突き止めること」と説明すると、非英語圏の人達、イタリア人やロシア人は、それで終わりです。でも、日本人は、そう聞いた後でも、必ず、電子辞書をひきました。  そして、目で「診断する。原因を突き止める」という文字を見ないと安心できないのです。  ただ、耳で意味を聞くだけではダメなのです。  たぶん、漢字、ひらがな、カタカナという三種類の文字を持ち、なおかつ、母音が5つしかなく、(英語は、数え方によりますが、少なくとも20以上)同音異義語が多いことなどが、「文字を目で見ないと納得しない日本人」を生んでいるのではないかと思います。
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ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

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