おじさん構文「~カナ?」でわかる“実は繊細なおじさん心理”。日本語学者が解説
ネット上で「気持ち悪い」と炎上しがちな「おじさん構文」。中高年男性が使いがちなメール・LINEの文章を指すものとして、2017年頃から広まった言葉だ。やたらと多い句読点、乱用される絵文字と顔文字、下心を感じさせる文章。これらがおじさん構文の特徴とされている。
何故おじさんはおじさん構文を書いてしまうのか? その謎を探るべく、横浜国立大学非常勤講師で日本語学者である松浦光氏に解説を求めてみた。松浦氏いわく、「おじさん構文の裏にあるのは、おじさんたちの自信の無さ」なのだとか……。
取材に応じてくれたのは、横浜国立大学非常勤講師の松浦光氏。日本語学者として若者言葉や比喩表現などについて研究している。
おじさん構文の発祥について、松浦氏は「週刊誌などの夜遊びレポートが起源では」と仮説を立てる。
「昭和から平成にかけて週刊誌によく掲載されていた、“夜の街レポート”の文体がベースとなっているのではないかと考えています。あとは“夜のお店の情報サイト”に載っている体験談ですね。そういった記事・レポートにありがちな表現が、そのままおじさん構文にも引き継がれているんです」
インターネット黎明期に創設された夜の店の情報サイトを覗いてみると、2000年~2004年に投稿された体験レポートにおじさん構文が多く散見された。その特徴をまとめてみよう。
・働いている女性を〇〇ちゃん(チャン)呼び。
・一語ごとに入る読点。
・小生、吾輩など、独特の一人称。
・(@_@;)などの顔文字を多用。
確かに昨今のおじさん構文と共通する。こういった文章の特徴と心理について、松浦氏は言語学の見地から次のように分析する。
「大袈裟な表現が多く、『〇〇チャン』などの妙な馴れ馴れしさがあります。チャン呼びをすることで相手と距離を縮めたいのは確かです。また、おじさん構文では、タメ口の合間に突然『です』『ます』などが入ることもあります。承認してもらって仲良くなりたい心理が働いていて、親密度の段階を調節して詰めようとしているんです」
言語学において、相手の呼び方と人間関係は密接に関わり合っている。一般的に、“さん付け”から“ちゃん付け”への移行は親しくならないとできない。本来なら徐々に距離を縮めていくものだが、おじさんたちは一気に階段を駆け上がりたいらしい。
「小生や吾輩などの独特の一人称を使うのは、文章に個性を出すためでしょう。その点では、初期の2ちゃんねるやテキストサイトの文体も影響を与えていると思います。例えば初期のネット文体では()を使ってセルフツッコミをする文化がありました。これが今のおじさん構文では『ナンチャッテ』にあたります」
既読がすぐに分かるLINE文化と違い、当時の掲示板やテキストサイトは“非即レス”の文化だ。反応が返ってくるまでのタイムラグが大きいため、気まずさを避けるべくセルフツッコミを置いていた可能性があるという。
「ナンチャッテも、返信が来るまでの気まずさ回避と考えられます。セルフツッコミをすることで自分の心を守っているのでしょう。おじさんたちの弱さが表れています」
「おじさん構文」の起源は“夜遊びレポート”だった?
〇〇チャン呼びに込められた感情「相手と親しくなりたい」
福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0
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