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国政は衆議院で決まるのではない。参院選で動く/倉山満

国政は衆議院で決まるのではない。参院選で動く

言論ストロングスタイル

第3回新しい資本主義実現会議で発言する岸田文雄首相。二言目には増税が飛び出すような“新しい資本主義”が一体どこへ向かうのか、我々国民は注視しなくてはならない 写真/産経新聞社

 新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。  昨年、私は「令和3年は19か月だ!」と断言した。そして今年の日本国民の選択が、今後3年を決める。  去年は、東京都議会議員選挙・自民党総裁選挙・衆議院議員選挙と重要な選挙が行われたが、すべて今年の参議院選挙の前哨戦だ。  日本の政治は衆議院で決まるのではない。参議院選挙で動く。  確かに、最高権力者である総理大臣は衆議院議員がなるものとの慣例が確立している。そして、なんとなく「衆議院は参議院より格上」との空気が蔓延している。それはそれで理由があることなのだが、本気で信じこむと読み間違う。政治の世界には、「参議院を制する者は日本政治を制する」「参議院を笑う者は参議院に泣く」との格言がある。そして、参議院選挙こそが、我々国民の生活に直結すると言えば、驚くだろうか。

参院選に負けた総理大臣は何もできない

 結論を言えば、参議院選挙に負けた総理大臣は何もできない。最近の例では、第一次安倍晋三内閣は衆議院で絶対多数なのに、参議院選挙で負けたために退陣に追い込まれた。逆に第二次政権では、衆議院選挙はもちろんすべての参議院選挙で勝利したので、超長期政権を築いた。  なぜ、これほどまでに参議院が重要なのか。理由は、政治のルールである憲法にある。日本国憲法では衆議院の優越を四つ記す。第一は総理大臣の指名。第二は条約、第三は予算、第四は法律である。だが、いまどき、政権の命運を決する条約など、ありはしない。一方で、最近までは「予算」が実質的に参議院に握られていたのだ。

日本の総理大臣の最高権力とは、日銀人事を指名できること

 国家予算の半分は国債(特例公債)である。これは、毎年法律(特例公債法)を通さなければ発行できなかった。民主党政権は哀れで、参議院で特例公債法を通せないので予算が実質的に成立しない。首相が退陣を約束して、野党の自民党の協力を得ざるをえなかった。これが民主党の首相の首が1年で飛んだ理由だ。今は毎年ではなくて5年に1度でよくなったが。  だが、経済は予算(財政)だけではない。むしろ現代では、金融の比重が大きい。金融を握るのは、日本銀行だ。日銀の金融政策は、総裁と2人の副総裁と6人の委員が決める。日本の経済政策は、この9人が握っていると言っても、過言ではない。日本の総理大臣の最高権力とは、日銀人事を指名できることなのだ。
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今年7月の参議院選挙の勝者が、次の日銀総裁を決める
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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