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名門「プリンスホテル」1500億円売却は衰退か英断か。日本のホテル事業の限界とは

昭和の象徴的ホテルの売却

ザ・プリンスパークタワー東京 公式HP

 コロナ禍で業績が悪化している鉄道各社が資産圧縮を進めており、西武ホールディングスも名門「プリンスホテル」の売却を決めました。  2月10日、西武HDは子会社プリンスホテルが保有するホテルやゴルフ場、スキー場など31施設をシンガポール政府系投資ファンドGICへの売却を決め、売却額は1500億円程度とみられています。  日本において「ホテルといえばプリンスホテル」のように代名詞のような存在。そして、バブルの象徴でもある「赤プリ」こと旧赤坂プリンスホテルでクリスマスの時期を過ごした方もいらっしゃるでしょう(奇しくも、筆者は赤プリ跡地、東京ガーデンテラス紀尾井町にてこの記事を執筆しています)。  そして、スキーブームとプリンスホテルの思い出も。1987年に公開された、映画『私をスキーに連れてって』でスキーブームとなり、広瀬香美の「ロマンスの神様」を聴きながら西武HDの万座・苗場で冬を過ごした思い出もあるでしょう。そのほか、著名人の結婚式や年末のディナーショーでも話題になるなど、世の中のトレンドとも深く関わってきたホテルブランドだと言えます。  日本の高度経済成長期と共にあった、プリンスホテルが外資に売却される報道を受けて、 「昭和がどんどん終わっていく」 「また、日本の資産が外資に…」 「ハゲタカファンドに好きにやられて…」  などと憂う声も聞こえてきました。  しかし、必ずしも悲観的な側面だけではありません。西武HDの英断と今後の展望をご紹介しましょう。きっと、またプリンスホテルに足を運んでみたくなることでしょう。

日本の「安い」不動産

 コロナ禍で景気は悪いのですが、実はコロナ下でも不動産市況は活発で外資系ファンドによる日本の不動産投資は拡大しています。背景にはカネ余りがあります。  世界のファンドはこれまで北米や欧州を中心に投資してきましたが、これらの地域の不動産市場が過熱気味なため、アジア、特に日本に関心が向かっています。  日経新聞の報道によれば「21年の海外投資家の購入額は約1兆1000億円と3年連続で1兆円を突破」していると伝えています。日本の不動産は、海外からすれば「割安」である点や「金利の低さ」により借入をしやすいといった条件が整っており、今注目されています(余談ですが、不動産だけでなく『日本株』も割安ですので、そろそろ海外勢の注目を浴びても良いころですよね…)。  日本はモノの値段が上がりにくいため、不動産価格まで「安い日本」となっているのです。
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経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

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