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「ハイブリッド戦争」時代における対外インテリジェンス機関の重要性とは

ロシアによるウクライナ侵略では、通常の軍隊による戦いだけでなく、SNSやメディアを使った情報戦やサイバー攻撃などを組み合わせた「ハイブリッド戦争」が繰り広げられている。これには、対外インテリジェンス機関の存在が重要となる。

「ハイブリッド戦争」時代、対外インテリジェンス機関の重要性とは?

インテリジェンス

デマに振り回されないためには公刊情報など信頼できる情報を踏まえるのが重要

 ロシアによるウクライナ侵略では通常の軍隊による戦いに加え、SNSやメディアを使った情報戦やサイバー攻撃などを組み合わせた戦いが行われている。この“21世紀型の戦争”は「ハイブリッド戦争」と呼ばれ、注目が集まっている。  評論家の江崎道朗氏は、ハイブリッド戦争時代における米国とロシアの手口をこう説明する。 「フェイクニュースやデマを広げる情報工作によって相手の国を混乱させて一気に占拠するというロシアのやり方に対して、米国はロシア側のプロパガンダに騙されないように、インテリジェンス機関による情報に基づいて『ロシア側はこういうことを考えている』『こういう手を打ってくる』ということを事前に情報公開している。バイデン政権は、こうやって相手に対して先手を打つインテリジェンス情報の事前公開戦術を一貫して行っています」

徹底的な調査と情報公開

 3月中旬、ロシアの国営テレビは「ウクライナで生物兵器が製造されている」というロシア政府の主張を報じた。そして、米国はそのウクライナでの生物兵器研究に出資していると主張したのだ。 「確かにウクライナには公衆衛生研究所は複数ありますが、ロシア側は“生物学”の研究所を意図的に“生物兵器”の研究所だと言い換え、国際社会を欺こうとしているのです。こうしたロシアのプロパガンダに対し、ロシア側の主張を裏付ける証拠はないと国連などもしっかりと反論しています」  このように米国はロシアの手口を研究し、相手の動向を踏まえたうえで徹底的な調査と情報公開を行っている。 「こうした例からもわかるように、ロシアのプロパガンダに対抗するには情報公開が一番重要ですが、情報公開にあたっては実際どうなっているのか、ロシアの動きやプロパガンダに反論できる『ファクトの調査能力』が必要になります。  米国には徹底して事実関係を調べるCIA(中央情報局) や米軍情報部といった対外インテリジェンス機関があるからできることですが、日本にはそれがない。ロシアや中国に対抗するためにも、日本もそろそろ対外インテリジェンス機関をきちんとつくらなければいけません。そうしないと、相手のプロパガンダに振り回されることになります」
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日本のインテリジェンス機関の活動は国内に限定
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(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。

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