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「買い物ができず不便」は的外れな感想…西武池袋本店のストは「注目すべき出来事」だった

池袋駅東口のシンボルでもある西武池袋本店が、8月31日にストを決行しました。スト決行により、西武池袋本店は全館が臨時休館。大手百貨店がストによって休館するという事態は大きな注目を集めています。 なぜ、西武池袋本店でストが起きたのか? そもそも問題の発端は何だったのか? 20年以上にわたり、池袋のまちづくりを取材してきたフリーランスライター・カメラマンの小川裕夫が解説します。
西武池袋

8月31日、西武池袋本店前で労働組合員による街頭活動が実施された(写真:小川裕夫)

大手百貨店のストは「1962年以来」

大手百貨店がストを決行するのは、1962年の阪神百貨店以来になります。それだけに、「西武池袋本店のスト」はニュースで大きく扱われました。 西武池袋本店は2006年にセブン&アイグループのそごう・西武の系列に加わっています。西武鉄道とは同じ“西武”を名乗り池袋駅東口で並びながらも、この時点から“他人”になったのです。 セブン&アイグループに列したものの、西武池袋本店はセブンイレブンやイトーヨーカ堂といったコンビニや総合スーパー事業と完全に棲み分けができる百貨店でした。そのため、小売業同士でシナジー効果を出せると考え、事業売却の方針を明確には示していませんでした。

スト決行までのいきさつを振り替える

このほど労働組合が使用者の経営方針に反対を表明してストを決行しましたが、その発端となったのはアメリカの投資ファンドフォートレス・インベストメント・グループとヨドバシカメラホールディングス連合がそごう・西武の株式を取得したことでした。これにより、「西武池袋本店にヨドバシカメラが出店するのではないか?」という憶測が流れたのです。 ヨドバシが出店すれば、当然ながら西武池袋本店で営業しているブランド品店は退去せざるを得なくなります。西武で営業しているブランド品店は、池袋駅東口の街並みに高級感を与える存在でした。 今どきブランド品で高級感を感じるのは時代遅れなのでは? 百貨店という業態が時代に合っていないのでは? と指摘されますが、西武池袋本店の年間売上は1500億円超です。これは日本全国の百貨店で3位の規模で、西武池袋本店は百貨店業界で見ても屈指の存在といえます。 この事態に、真っ先に動いたのが豊島区長の高野之夫区長(当時)でした。高野区長は2022年12月16日に記者会見を開き、池袋駅東口に立地する西武池袋本店の低層階にヨドバシカメラが出店することに反対を表明したのです。
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西武池袋本店は「池袋の象徴」
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フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。首相官邸で実施される首相会見にはフリーランスで唯一のカメラマンとしても参加し、官邸への出入りは10年超。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)などがある Twitter:@ogawahiro

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