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ビックカメラを追い抜くのは時間の問題?ヨドバシカメラが仕掛ける“猛烈な攻勢”

化学メーカーで研究開発を行う傍ら、経済本や決算書を読み漁ることが趣味のマネーライター・山口伸です。『日刊SPA!』では「かゆい所に手が届く」ような企業分析記事を担当しています。さて、今回は株式会社ビックカメラの業績について紹介したいと思います。 家電量販店業界は立地戦略によって郊外型と都市型に分けられますが、都市型量販店として双璧をなしてきたのがビックカメラとヨドバシカメラです。特にビックカメラはコジマやソフマップを傘下に置くなど、M&Aによって規模を拡大してきました。 しかし、近年ではヨドバシカメラがECや実店舗でも勢いを増しています。
新宿西口 ヨドバシカメラ本店

新宿西口 ヨドバシカメラ本店 ©picture cells – stock.adobe.com

はたして、軍配はどちらに上がるのでしょうか。ビックカメラの沿革と攻勢をかけるヨドバシ、それぞれの戦略を見ていきたいと思います。

郊外では「熾烈な陣取り合戦」が

家電といえばもともとは商店街の小さな電気店や秋葉原、日本橋(大阪府)といった「電気街」で購入するのが一般的でしたが、1980~90年代から大手量販店が各地で展開するようになります。ビックカメラとヨドバシカメラは都市部の駅前で拡大し、かつての電気街は客足が大手量販店に取られたことで、カルチャーを前面に押し出した街へと舵を切っていきます。 一方で郊外で店舗数を増やし、街の電気屋にとって代わる存在として台頭したのがコジマでしたが、2000年代以降はヤマダの台頭により規模を縮小。これには「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」の改正があります。「広さ」を武器に展開したヤマダが強い集客力を発揮したことで客足が離れてしまったのです。コジマの店舗はヤマダ電機よりも狭く、中途半端な印象を持たれたことが客離れの原因と言われています。 このように郊外で熾烈な陣取り合戦が繰り広げられているなかでも、ビックカメラとヨドバシカメラは都市型の量販店であったため、さほど影響はありませんでした。

順調に拡大していったビックカメラ

ビックカメラの歴史について見ていきましょう。ビックカメラは1980年にカメラ販売店として池袋に1号店を開店しました。2年後には同じく池袋駅前に出店し、89年には渋谷にも出店しました。90年代に入ると横浜や福岡のほか池袋でも追加出店を行い、ポイントサービス(ビックポイントカード)を開始しました。 2000年代は地方への展開を強化し、札幌や名古屋、京都や岡山などのターミナル駅前に進出しています。2008年には東証一部への上場を果たしました。2010年代からはM&Aを強化し、10年にソフマップを完全子会社化したのちに、12年には勢いを失っていたコジマを子会社化しました。特にコジマの子会社化の影響は大きく、グループ全体の売上高は2012年8月期の5,180億円から翌年度には8,054億円へと拡大しています。
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業績は、横ばいで推移したのちに悪化
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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