仕事

一流大卒のエリートが3年で退職したワケ。「電話のかけ方から表情まで“管理”されて…」

 上司からあらゆることに指示を受ける。指示どおりに動かないと、叱責される。意見を一切聞いてもらえない。精神的にもう耐えられない。あなたはどうするかー。
パワハラ

※画像はイメージです(以下同じ)

 今回は実際に起きた事例をもとに、職場で起きた問題への対処法について考えたい。本記事の前半で具体的な事例を、後半で人事の専門家の解決策を掲載する。事例は筆者が取材し、特定できないように加工したものであることをあらかじめ断っておきたい。

事例:上司の「マネジメント」に苦しむ26歳エリート

 中堅の教材制作会社(正社員数200人)に一流私立大学卒の新卒として入り、3年目の男性社員・村田孝(26歳)は今年7月に退職した。中度のうつ病になり、毎日出社することすら難しくなっていた。入社時に配属された制作企画部(部員12人)の40代後半の部長(課長兼務)から、1つずつの仕事に指示や助言、報告を求められる。報告を忘れると、携帯に電話がかかるか、メールが来る。  指示どおりに進めないと、「なぜ、そのようにするのか」と報告を求められる。必ず、上司の指示どおりに動くことをしつこく言われる。双方の話し合いでは、1時間のうち55分は上司が一方的に話す。意見を言えば必ず否定され、指示どおりに仕事をするように何度も言われる。  村田だけではない。部員のほぼ全員が指示どおりに動くように命じられる。独自の判断で動くと、叱責を受ける。村田は部内ではいちばん若いこともあり、部長のマイクロマネジメントがエスカレートする。電話のかけ方、メールの書き方、服装、言葉づかい、表情、あいさつなど細部にもわたる。

「トンデモ社員」でも辞めて良かった

 部長の指示には事実誤認や明らかに誤りもある。それに意見を言えば、必ず否定をされる。指示どおりに動き、問題が生じると、「経験が浅いからだ」と否定される。そこで反論をすると、しつこく説教を受ける。部内の雰囲気はまったりとして、30代後半の先輩らも部長の顔色をうかがい、独自で判断をしない。部長のところで、大半の仕事がストップする。部長が全部の案件に目を通すからだ。  それで取引先とトラブルが生じても、「君らの経験が浅いからだ」と一蹴される。村田はしだいに仕事をするのが億劫になり、2年目から時々、休むようになった。先輩に相談をすると、部長からは「なぜ、まず、自分に相談をしないのか」と報告を求められる。部長は部内のあらゆることを掌握し、仕切っていないと気がすまない。  常に自分が中心で、自分の判断で隅々まで動かそうとする。それを「マネジメント」と思い込んでいる。村田は転職先は決まってはいないが、もう耐えられないと思い、辞める意志を伝えた。なぜか、社内では無責任な辞め方をする「トンデモ社員」となっている。それでも、辞めてよかったと思っている。
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エリート新卒が辞めた根本的な理由とは?
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ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
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