更新日:2017年11月27日 21:20
カーライフ

リッター40kmでも4代目プリウスに世界征服はムリ。ハイブリッドカーには節約の道しかないのか?

’97年12月に世界初の量産ハイブリット乗用車として登場したトヨタのプリウス。世界一のハイブリッドカーであります。そのプリウスが、間もなくフルモデルチェンジ。4代目に生まれ変わります。そのプロトタイプに乗ってみたのですが、一番驚いたのは、デザインでも燃費でも乗り心地でもなく、洗面台のようなセンターコンソールの造形でした ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=988866 間もなく登場する国宝プリウスの新型の評価に悩みましたMJブロンディ=文 Text by Shimizu Souichi 池之平昌信=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu ◆この道しかない? 間もなく登場する国宝プリウスの新型の評価に悩みました  世界初の量産ハイブリッドカー・プリウスは、日本の優れたモノ作りの象徴。最近はロケットやジェット機の陰にちょい隠れ気味だが、日本がロケットやジェット機の分野で世界一になるのは絶対ムリだ。しかしハイブリッドカーの分野では、プリウスがブッチギリで世界一。2位じゃダメなんだよ! プリウスこそ国の誇り。国宝とも言える。  その国宝が間もなくモデルチェンジし、4代目にバトンタッチする。世界一から世界一へ! これは全国民が注目すべき大イベントと言っていい。ブォ~(法螺貝の音)。不肖ワタクシ、そのプロトタイプに試乗してまいりました。
4代目プリウス

「4代目プリウスは顔面が崩壊している」といった声も聞かれますが、しばらくすれば見慣れるので問題なし。洗面台的センターコンソールにも、そのうち慣れるでしょう

 して、その評価に悩んでいるところでござる。  なぜ悩むかと申しますと、十分イイという思いと、これでイイのかという思いが交錯するからである。  まず前提として、6年前の3代目プリウス登場時とは、世情がかなり変わっている。6年前はリーマン・ショック直後の不況ドン底期で、だからこそ節約のエースであるプリウスは大スター。「リッター38㎞」というカタログ燃費に全国民が熱狂した。実際にはそんなの死んでも出ませんけど。
ハイブリッドカー・プリウス

先代プリウスの実燃費はおおむねリッター20㎞。新型はリッター22㎞強まで向上している……はずだ。歩行者にも反応する自動ブレーキも装備できるようになります。

 しかし現在は、緩やかながらも景気は回復している。原油安でガソリン価格は下落しまくり、節約気分は薄らいでいる。グローバルで見れば節約どころか贅沢がトレンドだ。  そんななか4代目プリウスが新たに叩き出したカタログ燃費は、リッター40㎞。無知な国民が「そんなに変わらないやないけ!」と思っても無理はない。実はこの6年間で燃費の計測法が変わって(10・15モード⇒JC08モード)、1割くらい基準が厳しくなってるんですよ。  つってもやっぱリッター40㎞なんて実際は出ませんし、しかもリッター40㎞は燃費スペシャルの特殊グレードだけ。それ以外はリッター37㎞だ。パッと見、「先代より下がってるやんけ!」である。  本当のところ、実燃費は先代より約1割向上している。先日初飛行に成功したMRJは、「他社機より燃費が2割いい」というのがウリだが、プリウスはもともとガソリン車の半分の燃費というところから出発しているので、1割削るのも血の出るような努力の賜物。さすが国宝! スバラシイ! ただ、今さらその1割に熱狂する国民は多くない。グローバルではもっとそうだ。アリの努力を横目に、キリギリスはデカいSUVでブイブイ言わせている。それが世界的トレンドなのである。
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新型プリウスのカイゼンは、すべてが地道
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1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中

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