トヨタ・シエンタがバカ売れしております。ワタクシも勢い余って注文したところ納期未定(涙)。トヨタとしても、こんなに売れちゃうとは!とうれしい誤算だったようです。一方、欧州でバカ売れ中なのがシトロエンC4カクタス。今回は日仏のバカ売れクルマを比較。そのクルマ哲学の違いを実感しました!
MJブロンディ=文 Text by Shimizu Souichi
池之平昌信=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu
◆デザイン命のカクタスと実用命のシエンタを比べてみました
クルマが売れない売れないと言われておりますが、ワタクシ今年7月に生涯42台目の愛車としてS660を購入し、続いて生涯43台目の愛車としてトヨタ・シエンタを注文して納車待ちです。
S660は現在納車1年半待ちとかで、走るたびに羨望の眼差しを受けておりますが、シエンタも人気炸裂で納期不明、半年くらいの待ちらしい。クルマが売れないのってどこの話?っつー感じっス。
シエンタのイチオシポイントは、なんといっても3列目のシートが2列目のシート下にすっぽり入ること。大きな荷物も余裕で積めます。しかもコンパクトなのに7人乗れ、ハイブリッドもある。走りも意外によかったです
シエンタは傑作だ。くら寿司の駐車場で黄色のシエンタを見かけたが、その輝きにウットリ! デザインも色もスバラシイ! 黄色のシエンタ最高! 早く欲しいっス!
が、シエンタを最初に見た時、担当Kはこう叫んだ。
「これってシトロエンのマネですよね!?」
言われてみれば、顔の周囲の頬髯みたいな彫りや微妙にアバンギャルドな造形は、シトロエンっぽいと言えなくもない。いや、これは確かにシトロエン・デザインの影響を受けている! 具体的にはシトロエンC4カクタスだ! 間違いない!
C4カクタスはまだ日本に正規輸入されてないが、先日「CARBOX横浜」なるマニアックなお店に顔を出したところ、なんと実物が置いてあった! 欧州から並行輸入したそうで、私はつい「ホンモノだ!ホンモノだ!」と叫んでしまいました。
エンジンは1600ccのディーゼル。今後あっちでは規制の強化も噂される、話題の欧州製小排気量ディーゼルだ。早くもほのかに漂う絶滅危惧種の香り。これが日本で買えるなんてスゲエ!
ということで、ホンモノとニセモノの感動の対面を行いました。
ワタクシが注文したのはガソリンモデルのGグレード(198万円327円)。我が家に迎え入れるなら、モデルのようなフランス美女より働き者の大和撫子。すでに家にはセクシーなイタリア美女がいるし
並べてみたら、あんまり似てないんだよね……。なんせプロポーションがまるで違う。シトロエンのほうがグッと背が低くてスポーティ、シエンタが配達用に見える。いや、シエンタはこの緑色がいけないんだ、黄色ならもっと健闘するはず! 滝クリ様もCMで乗ってるし。
「滝クリがシエンタに乗るわけじゃないじゃないですか! 乗るなら絶対カクタスでしょ」(担当K)
言われてみれば、そのほうが300倍似合うな……。でもいいんだよ! シエンタは自転車が積めるんだから。7人乗れるし! そんなのシトロエンにはムリ!
実物を乗り比べて見ると、日仏のグルマ哲学の違いを痛感しました。なにしろシトロエンはデザイン命。すべての造形がお洒落でカッコいい。サイドの板チョコみたいなのは「エアバンパー」というポリエチレン製のエアクッションで、押すとグミみたいな感触でお洒落すぎる。ただ室内の広さはフツーのコンパクトカー+α。なによりデザインがウリだ。こんなのトヨタ車にはムリっす。
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=969272
とにかく外観も内装もお洒落なカクタス。板チョコのような「エアバンパー」はもちろん旅行用カバン風のダッシュボードなど、実用性よりデザインだ!というフランス人の声が聞こえてきそうです
ディーゼルの感触はゆったりホンワカしたもので、あっちのデータでは燃費はなんとリッター30㎞。ロングドライブならプリウスより燃費がイイ。欧州でディーゼルが優位な理由がよくわかりますね。
対するシエンタ最大のウリは、なんといってもシートアレンジだ。こんなコンパクトなボディで室内はバカ広く、3列目シートが2列目の下に潜り込むように収納できる機能には心底感動。物凄いスペースユーティリティだ! こんなクルマはフランス人には絶対造れない! それでいてデザインにはシトロエンっぽいアバンギャルドさがほのかに感じられるという絶妙さがイイ。
お値段にはそこそこ差があるが、シエンタもオプションを付けたら240万円くらいになりました(ガソリン車のG)。ハイブリッドだと+35万円なので、意外と僅差です。
この日本で、この2台を比べて悩む人はゼロでしょうが、デザインを取るか便利さを取るかという民族性の違いとでも申しましょうか。欧州では、C4カクタスが日本でのシエンタ以上にバカ売れしているとのことで、価値観の差を感じます。ちなみにシエンタは国内専用車で、今のところ輸出の予定はないそうです。
【結論】
今回この2台を比較したのは、日本とフランスのクルマ嗜好の差を感じてもらいたかったからっス。日頃からデザイン偏重のクルマ変態のワタクシでも、この2台を比べてシエンタの広さと便利さを選んでしまいました
取材協力/CARBOX横浜
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『
そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『
首都高速の謎』『
高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中