キンコメ高橋の逮捕で見落とされる“依存症”の背景

 人気お笑いコンビ「キングオブコメディ」の高橋健一容疑者が、女子高校生の制服などを盗んだ疑いで26日、警視庁に逮捕された。高校に忍び込み、体育館の女子更衣室から部活動中の生徒のブレザーやスカートなどを盗んだ疑いが持たれており、「20年くらい前から学校荒らしをやった」と供述したという。

学校

※写真はイメージです

 そんな高橋容疑者には、過去の家族関係に注目が集まっている。母親とは幼い頃に死別していると言われており、かたや父親は事業に失敗し、2500万円以上の借金を抱えることに。2010年のキングオブコント優勝賞金も、借金返済の一部にあてたと高橋容疑者は語っている。心理学の立場から見ると、彼の“性癖”だけでなく、その背後にある発育過程にも目を向ける必要があるだろう。

 心理学の世界では、幼少期の発育過程でトラウマを受けた人が、うつ病、適応障害、ひきこもり、境界性人格障害、そして依存症などの問題を抱えやすく、その背後にあるのは、自己否定的な考えや自己評価の低さによる社会適応の困難だと言われている。家庭での虐待、暴力、ネグレクト(育児放棄)などの過酷な環境にあり、子どもが成長していくなかで「自分は親から愛されていない、自分には人から大切にされる価値がない」といった自己否定感や精神的な圧迫感を慢性的に感じることで、精神発達や対人関係への適応に障害が起こることがあるという。

 高橋容疑者がこうしたケースにあてはまるのかどうかは定かではないが、決して恵まれた環境で育ってきたわけではないことを加味して事件の本質を考える必要があるのではないだろうか。依存症には「アルコール」「薬物」「ギャンブル」「ネット」「窃盗癖(クレプトマニア)」「性嗜好障害(性依存症)」などが挙げられ、今回は「窃盗癖」や「性依存症」といった可能性が考えられる。

 とりわけ「依存症」は、孤独感や劣等感、精神的ストレスに対処できなくなった人が発症しやすい精神障害であり、それらを少しでも緩和し麻痺させるためにさまざまな依存性を形成することが多いという。あくまで「依存症」は一時的な防衛に過ぎず、そのまま依存症の行動を続けていれば、身体の健康を壊したり社会生活に適応できなくなったりといった問題が発生するようだ。

「性依存症」に関する著書の一部を引用してみよう。『性依存症の治療』(金剛出版)では、性犯罪を引き起こす「性依存症」は、事件や犯罪の側面だけではなく「心の病気」「現代病」であることを理解する必要性を述べている。「性依存症」を抱える人たちは、日常的に「性嗜好のファンタジー」を抱いており、それは生涯消えることがない。そのファンタジーを満たす快感を味わうために、チャンスがあれば繰り返し、逮捕されるのは運が悪いからと考え、贖罪の意識が欠け本人の意志だけではどうにもならない、というのが再犯の原因だそうだ。

 また、編著を担当した榎本稔医師は「性依存症あるいは性犯罪問題は、懲役という矯正方法だけでは限界があり、再犯を防止することは困難を極めている。今後は、精神医療的なアプローチとの連携が必要となってくると考えている」と本書で述べている。また、薬物依存症に苦しめられた田代まさし氏は、SPA!のインタビューで「刑務所は罪を反省させる場所でもないし、薬物依存を回復させてくれる場所でもないことを実感した」と獄中の経験を振り返っている。

 今回の件にかぎらず、日常的に性犯罪に関するニュースが報道されているのをしばしば見かけるが、「犯罪はダメだからしっかり罪を償わせるべきだ」という一面的な判断だけでなく、その背景にあるものをしっかり見つめる必要があるのではないだろうか。 <取材・文/北村篤裕>

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