恋愛・結婚

童貞率36.2%「今どき草食男子は無菌野郎と呼ぶべき」

―[山田ゴメス]―
ベテランライターが原点回帰のドサまわり。独断と偏見で選んだ、巷をにぎわすニュースを猛追跡! 【記者・ゴメスが追う 第5回】 ある日の朝。いつものようにモーニングコーヒーを片手に朝刊を熟読していたところ、ある記事を見て脳がフル回転した。 『童貞36.2%!』 これを見てまず思ったのは、「ウソだろ、おい」ということだ。 記事によれば、なんでも国立社会保障・人口問題研究所が11月25日、通称・独身者調査と呼ばれる『出生動向基本調査』を発表したという。それによると「性体験のない未婚者男性」(18~34歳)が、’10年には36.2%にも達したのだそうだ。(ちなみに女性は38.7%) 各メディアはこぞって「草食化がここまで!?」などと書き立てていたが、ちょっと待て。それは違うんじゃないか。 ◆草食系は本当に増えているのか? おおざっぱに四捨五入して言い切ると、 18~34歳男子の4割弱が童貞ということだ。 「そんなにいっぱいいるのか?」と、思わず目をしばたかせてしまう驚きの数値である。たしかに’05年(31.9%)からは4.3%も高くなっている。ちなみに対象人数は3667人。おそらく統計学上からいえば、充分な数字なんだろう。しかし、ここで忘れちゃいけないのが、 「童貞は童貞同士で群れをなす」 という習性だ(逆にヤリチンもヤリチン同士群れをなす)。 童貞(もしくはヤリチン)は国内にまんべんなく分布しているのではなく、たとえばメイド喫茶だとかAKB48のじゃんけん大会だとか自宅の引きこもり部屋だとかに集中生息していると思われる。(編集部注:多分に偏見が交じっておりますがご了承ください) そう考えると、’97年(35.7%)、’02年(35.3%)、’10年(36.2%)がほぼ同じなのに比べて、4~5%も童貞率の下がった’05年だけは、童貞鉱脈の一遍をたまたま偶然スルーしてしまっただけ、と考えるほうが自然なのではなかろうか? むしろ、’87年(43.1%)、’92年(41.5%)に比べれば、“童貞率”は確実に下がってきている。少なくとも数字の上だけだと、「20年前より、日本は男子の肉食化がすすんでいる」わけだ。 ◆草食系の中で細分化される“積極的童貞”と“消極的童貞” ただ近年、童貞の質が明らかに変わってきている点は見逃せない。 20年前はヤリたいのにヤレないモテないという、いわゆる「消極的童貞」が圧倒多数だったのに対し、現在はヤリたくないからヤラないという「積極的童貞」が増えているように思えてならない。 今どきの童貞クンの典型的な言い分をいくつか上げてみよう。 「デリヘルに行って、ああ……エッチってこんなもんか、と幻滅した」(23歳・大学院生。本番経験はないので一応童貞?) 「エッチにいたるまでの食事や口説いたりのプロセスが面倒臭い」(32歳・アルバイト) 「男だけで飲んでるほうが気がラク」(31歳・編集) 「アソコが臭かったり、ヨダレが気持ち悪い……」(26歳・公務員) 「妊娠が怖い。あと、性病も……」(31歳・会社員) 僕が思うに、男のセックス感の変化には以下のような流れが存在する。 ■日本独特のお手軽系風俗(=本番なし風俗)全盛のため、とりあえずセックスの真似事の体験が安易になった ↓ ■80〜90年代にかけて行われたマニュアル雑誌における「対セックスの執拗な啓蒙」が、出会い系サイトなどと結びついて21世紀に花開き、とりあえずセックスすること自体も安易になった ↓ ■実際やってみて、なんらかに失望した ↓ ■ネットの劇的進化やアイドルの大量生産によって、良質なズリネタ発掘も安易になったので気ままに童貞(もしくはセカンド童貞)を貫き通す。 彼ら積極的童貞者(セカンドを含む)からすれば、匂いや体液や性病や妊娠や女性との煩わしいコミュニケーションは、すべてが“菌”みたいなものなのだ。そして、ちまたに蔓延する雑菌を避けるため、彼らは、清潔で完成度の高いオナニーに走ったり、精神ホモ(=ホモの自覚がない、プラトニックなメタホモのこと)と化しては男同士のつき合いにくつろぎを見いだしたり……と、みずからを無菌室へと封じ込める。 菌に対する抗生がめっぽう弱い。 そんな純粋培養のなかで育ちつつある彼らは、もはや「草食系」の一言でくくるのではなく、もはや無菌野郎と呼ぶのが相応しいのではないか。 やむを得ず草しか食えない者と、草がいいから草を食う“菜食主義者”をきちんと分けて考えるべき時代なのだ。 ところで、前々から煮え切らなかったんだが、肉食系の「肉」が女体や男体を指すのはわかるけど、草食系の「草」はいったいなにに該当するんだろう。趣味とか同性の友だち? それともズリネタ? 山田ゴメス【山田ゴメス】 1962年大阪府生まれ。マルチライター。エロからファッション、音楽&美術評論まで幅広く精通。西紋啓詞名義でイラストレーターとしても活躍。日刊SPA!ではブログ「50にして未だ不惑に到らず!」(https://nikkan-spa.jp/gomesu)も配信中。現在「解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ系列)(http://www.ntv.co.jp/99answer/)に“クセ者相談員”として出演。『クレヨンしんちゃん たのしいお仕事図鑑』(双葉社)も好評発売中! 取材・文・撮影/山田ゴメス
大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター兼コラムニスト&イラストレーターであり、「ネットニュースパトローラー(NNP)」の肩書きも併せ持つ。『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。保有資格は「HSP(ハイリー・センシテブ・パーソンズ)カウンセラー」「温泉マイスター」「合コンマスター」など
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