AV女優・大塚咲が描く、すごいアートの世界
―[山田ゴメス]―
ベテランライターが原点回帰のドサまわり。独断と偏見で選んだ、巷をにぎわすニュースを猛追跡!
【記者・ゴメスが追う 第4回】
週刊SPA!本誌にて4コマ漫画「アラサーちゃん」を連載中の峰なゆかさんなど、幾人もの(元)AV女優が今、クリエイティブ・フィールドへ活躍の場を広げている。
これまで肉体を武器に世をわたってきた彼女たちは、なぜアートに走るのか。
そこで現在、「イラストレーター&写真家」の肩書きを持つAV女優・大塚咲さんに話を聞いた。
むろん、僕的にとてもタイプである彼女に純粋に会ってみたいという下心があったという事実も書き添えておこう。
◆「AV女優が描いた~」という“冠”なしでも評価される作品
「自分の性格を一言で言うと“マジメ”です。それも上に“くそ”が付くぐらいの。もし、なんかの履歴書に自己紹介の欄があれば、迷いなく“くそマジメ”と書きます(笑)」
そう語る大塚咲さん。18歳でAVデビューし、何度か名義を変えながらもほぼ10年、単体女優として人気をキープし続けている。
そんな多忙さのなか、モデル業も兼任し、さらにイラストレーターとして個展を開いたり、ファッションブランドにイラストを提供したり……。クリエイティブの世界でも高い評価を得ている。
たしかにAV女優がクリエイティブの世界へ転身を図るケース自体は、これまでにもあった。ただ、一昔前のそれは絵描き自慢のAV女優がマンガで現場リポートをするなど、あくまでAV女優という“冠”ありきで、技術力不足には目をつぶる、趣味クラスの作品ばかりだった。
それに比べ、彼女の作品には技術力に格段の違いを感じる。AV女優という肩書きから切り離しても、きちんとそれが商品として成立しているのだ。
「小さいころから、静かで大人しい子でしたね。外で駆けまわるタイプでは全然なかった。グループで動くのも苦手だったので、スポーツを本格的にやった経験もなく、ひとりで絵ばっか描いてました」
幼少期をそう振り返る大塚さんは、かなり早い時期から、「将来は美術関係の仕事に就きたい」と考えていたらしい。なのに、AV女優とは正直、回り道感も否めない。だがその理由を「より人を知りたかったから」と微笑む。
「SEXって人間同士が一番深く理解し合える行為じゃないですか。SEXを通じて、会話だけじゃわからない、いろんな人の本性や自分の内面をもっと知りたかった。今、振り返ると若気の至りだったのかもしれませんけど、あのころは真剣にそんなことを考えてました」
そう思い込んでからの行動は早かった。「AV女優になる!」と決めて、自分から新宿をうろつくスカウトマンに声をかけたという。彼女の“くそマジメ”がにじみ出てくるようなエピソードだ。
「メイク学校に少し通ってたこともあるんですけど、周囲のノンビリしたテンションになんとなく馴染めなかった。だったら、いっそのこと勝負に出るか、と。AV女優になって“人間を勉強”しながら空いた時間にコツコツ絵も描いて……。当時の私にとっては、それが一番現実味のある選択だったんだと思います」
しかし、21歳で一度、大塚さんは引退を決意する。
「想像していたほどダークな世界でもなかったし、ある程度キツイ仕事だろうとも覚悟はしていたんですけど、一般社会では普通に守られるはずの約束事が、なあなあでなし崩しにされるいい加減さに我慢できなかった。でも、半年くらい悩み抜いた末、結局はカムバックしました。『ああ、まだ戦いきった感じがしないな』って心に引っかかってたし、やりきるところまでやったら次のことにも目を向けられるだろうと思ったので……」
次のこととはもちろん、絵を描くことだ。
◆オフィシャルWeb Photo Shop「密賣nude」を立ち上げ
そうしてアートの世界に飛び込んだ大塚さん。その探究心は絵だけに留まらず、写真の世界にも向かっている。「ビデオよりスチールの仕事のほうが好き」という彼女は、言葉を交わさなくても、ファインダー越しにカメラマンと通じ合える瞬間がたまらないと話す。
「ずっと(カメラを)流しっぱなしのAVに比べて、グラビアは一瞬一瞬が勝負じゃないですか。で、そんな緊張感のなかで撮られ続けていると、不思議とカメラマンさんが今、なにを考えているかがわかる瞬間があって……。そこでの一体感はSEXに近い快感なのかもしれません」
撮る側にもまわってみたいという好奇心が芽生え出したのは、むしろ自然の流れだったのかもしれない。3 年前にデジタル一眼レフカメラを購入。怒濤のように押し寄せてくるAV仕事の合間を縫ってはセルフヌードを独学で、地道に撮りためてきた。
そして’11年10月には、写真家として「密賣nude」というオフィシャルWeb Photo Shopも立ち上げている。
「『密賣nude』は、セルフヌードを中心に、友人や、公募で集めた女性のヌードを掲載したデジタル写真集です。昨年あたりからようやく(AVの)仕事も落ち着きはじめ、こっちにある程度没頭できる時間もできるようになったので。今はイラストと写真を1:9くらいの比率で活動していますね」
モデル選びには、かなりこだわるそうだ。ポイントは天真爛漫じゃないこと。あと、あまり今どき風ではなく、どこか昭和の香りを残している女性。
「明るすぎず、顔に少々陰があるくらいのコのほうが(モデルとしては)好みかも。もしかして今、迷子なのかな、みたいな。やっぱり私に似たタイプですよね(笑)。で、目は一重で妖艶なオーラがあって……そういうタイプのコの弱い部分を覗き見できるような写真が撮れたらな、と考えています」
20代の大半を過酷なAVの世界で生き抜き、「やっと人として、女として穏やかな毎日をすごせるようになった」と語る大塚さん。その表情に気負いのようなものは感じられない。
AV女優という過去が長く続ければ続けるほど、売れれば売れてしまうほど、人生をリセットするときの足かせになりかねない現実はいまだに根強い。
だが大塚さんの持つ、ある意味、AV女優らしくない生真面目さやストイックさ、そして頑固さは、その足かせにも勝るアーティストとしての資質なのかもしれない。
言葉にすれば平凡だが、やはり継続こそが力なのである。
●大塚咲オフィシャルWeb Phot Shop『密賣nude』
(http://otsukasaki.jp/)

―[山田ゴメス]―
大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター兼コラムニスト&イラストレーターであり、「ネットニュースパトローラー(NNP)」の肩書きも併せ持つ。『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。保有資格は「HSP(ハイリー・センシテブ・パーソンズ)カウンセラー」「温泉マイスター」「合コンマスター」など
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