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「バッジはなくても政治はできる」意外と明るい落選議員の弁

先の衆院選では、多くの現役議員が職を失った。大野伴睦の「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちればただの人」という言葉もあるが、当人たちは今、何を見据えているのか ◆真に今、逆境にある“元先生”たちは何を思うか? (’12年落選⇒党代表代行を務めつつ再起を目指す・松木謙公氏)
松木謙公氏

松木謙公氏

 先の選挙戦では、民主党の候補者だけでなく、民主党を離党した政治家たちの苦闘も目立った。  北海道12区で落選した、松木謙公氏もそのひとりだ。’11年の菅内閣の不信任案に同党の議員仲間の説得を振り切り、目を真っ赤にしながら賛成票を投じた場面を覚えている読者もいるだろう。結果、民主党を除籍処分になり、今回は新党大地から立候補するも、無念の落選となった。しかし、取材に現れた松木氏は定番のオホーツクブルーのスーツを身にまとい、表情も思いのほか明るい。 「実はヒゲも伸び放題だったんだけど、妻に『取材なんだからキレイにして行きなさい』と言われて今日、剃ってきたんだよ」と笑う。実は松木氏、選挙から10日以上がたったこの取材の直前まで、地元を行脚していたという。 「北海道12区は日本一広大な選挙区です。後援会や事務所の職員など、たくさんの方の力を借りなければ、選挙を戦うことすらできませんでしたから」  国会議員一人あたりにかかるコストを計算すると、歳費の2200万円のほか、各種手当や公設秘書の公費などを含め、年間で平均7000万円が支給される。秘書や事務職員への給料もここから捻出される。 「私自身は、会社役員(建設・教育業界紙)としての収入もあるので、自分の食いぶち程度ならなんとかなります。しかし携わってくれた方にも当然、自分の生活がある。落選後は北見をはじめ、北海道内に7か所あった事務所のスタッフの次のアテを後援者など周囲に聞きまわり、頼み込む毎日でした」  落選して議員バッジは失ったが、政治家としての活動は現在も続いている。年明けも4日から、地元への挨拶回りをスタートさせた。 「選挙に負けたのは悔しいし、反省もしなくてはいけないが、国会議員でなくなっても、政治家として活動できなくなるわけではない。極端に言えば議決権がなくなっただけ。国を、そして地元北海道をどうするか考え、理念を伝えることはできるでしょうし、地元の懸案の解決もこれまでの人間関係でできることはたくさんあります」  現在は一人の政治家として、そして新党大地の代表代行として、今年行われる参議院選挙に向けての準備に追われる毎日だという。 「私自身が参議院選挙に出馬するかどうかも含め、現時点では白紙の状態です。他党との連携も現時点では何も決まっていません。現状の政党政治は、党の決めた事項に対して逆らうことができない。同じ議会政治でもアメリカでは、共和党と民主党が一緒に法案を作ることも……。民主党が大勝した前回、自民党が圧勝した今回の選挙を受けて『極端すぎる』と選挙制度に対する批判もありますが、党議拘束でがんじがらめになっている議決権の運用を変えれば、日本の政治はよりよくなると考えています」 【松木謙公氏】 ’59年、北海道生まれ。’03年以来、衆議院議員を3期10年務めてきたが、先の衆院選において落選。現在は「新党大地」の代表代行として、党の運営に携わっている ― 「タダの人」になった元国会議員のその後【1】 ―
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