更新日:2014年01月13日 11:47
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鹿肉処理場で獣の処理と流通を考える

農作物や在来種に被害をもたらし、生態系を脅かす鳥獣たち。しかし、見方を変えれば高級食材でもある。以前(https://nikkan-spa.jp/557125)述べたとおり、害獣グルメの主役はシカである。シカの肉はどう処理され、流通しているのか――音楽ライブでシカの解体ショーを披露するなど、この問題に強い関心を持つ「水曜日のカンパネラ」のシンガー・コムアイさんとともに、東京都内唯一の鹿肉処理場である奥多摩町の「森林恵工房 峰」を訪ねた。 ◆鹿肉処理場で獣の処理と流通を考える
森林恵工房 峰,コムアイ

「森林恵工房 峰」の前で。コムアイさんは「水曜日のカンパネラ」というユニットで音楽活動を行いライブでシカの解体を披露

 ここは全国119か所の鹿肉処理場のひとつ。’93年からシカの捕獲に力を入れてきた奥多摩町が、焼却処理していた鹿肉を活用して観光資源とするべく、3700万円をかけて’06年に完成させた。  案内してくれたのは、奥多摩町観光産業課の獣害担当・清水洸佑さんと、処理場職員の酒井卓真さんだ。 「林の下草を山肌が禿げるまで食べてしまうので、雨が降ると地滑りが起きてしまうんです。今は年1400万円の有害鳥獣捕獲委託金を支払って、猟友会に捕獲を依頼しています」(清水さん)  初年度は360頭の捕獲枠を満たしたが、生息頭数は全国でも珍しいことに年々減っているという。捕獲圧が生じ、生息密度が落ちているらしい。’12年の有害鳥獣捕獲頭数は161頭。駆除活動は年約110回行われるから、1回あたり2頭も獲れていない計算になる。  処理場では保健所の指導のもと衛生管理を徹底させている。搬入は仕留めてから2時間以内と定められており、処理室は2つに分かれている。冷凍庫、冷蔵庫はもちろん、包丁研ぎ機、ナイフや手袋の熱湯消毒機、残留銃弾がないかを調べる金属探知機まで完備。 ◆処理と販路が追いついていない現状  鹿肉は町内の食堂やおみやげ品「山の恵みカレー」の工場に卸す。内臓を傷つけると食肉には使えないなど条件も厳しく、処理に回せる個体は捕獲数の6~7割程度。1頭からとれる枝肉は約2割、50kgの個体なら良好な状態で搬入できて10kg程度だという。採算については? 「正直ギリギリです。ほかの市町村から事業化を睨んで処理場を造りたいと相談されますが、しっかり計画を立ててからの実施を勧めています」  コムアイさんはその話が衝撃的だったという。 「シカの個体数調整のために全国の自治体が狩猟者を増やそうとしていますけど、食肉消費を増やしてビジネス化するには処理と流通がまだまだ追いついていないのかなと思いました。保健所の基準を満たすにはコストがかかるし、難しい。課題はココですね」  確かに難しいが、だからこそ解決できたら画期的だ。継続的な取り組みに期待したい。 ◆鹿肉処理の流れ ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=557217 【まずは施設の外で毛皮についた雑菌を洗浄】 捕獲現場で血抜きして搬入されたシカは、まず四肢と頭を落とし、懸吊ハンガーに逆さにぶら下げて清水で徹底的に洗浄する 鹿肉【一次処理室で、毛皮を剥ぎ内臓を摘出】 胃腸の内容物が出ないよう直腸と食道を結搾し、傷つけないように内臓を摘出。ナイフや手袋は、83度以上の湯につけて消毒する 鹿肉【二次処理室で小分けにし、食肉処理室で加工】 ロース、モモなど部位ごとにブロック肉にして真空パックし、冷凍で販売する。トレーサビリティのためにラベルもつけられる ― [害獣グルメ]食ってみたら美味かった【7】 ―
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