エンタメ

小堺一機が語る『ごきげんよう』で学んだトークの極意

『いただきます』そして『ごきげんよう』の司会として30年もの長きに渡り、実にたくさんの人たちとのトークを繰り広げてきた小堺一機。いったい彼のトークにはどんな秘密が隠されているのか?その極意にせまる!
ごきげんよう

みなさまに愛されて30年

◆準備はしない!? 自然体で臨む ――番組を見ていると、小堺さんは常にゲストが投げるどんなボール(話題)でも上手に拾ってトークをつないでいるイメージがあります。 小堺:いや、たとえワンバウンドで拾ったとしても、そう見せてないだけ(笑)。そりゃ、30年もいろいろな人と話していたら、言葉の使い方をはじめ、どうしたらいいかはおのずと教えてもらいますよ。ベテランの方からはうまい言い方を、若い子からは今どきの言葉を教えてもらいますし。ただ、気をつけているのは萩本(欽一)大将から教わったことで、「デブの人を『デブ』と呼んだら、それはコメディアンじゃなくて素人」ということ。見たままをストレートに表現するのではなく言い回しのバリエーションには気をつけています。 ――というと、常に頭を柔軟にして自然体で臨んでいるということですか? 小堺:そういうふうに言うとかっこいいですけど、何の準備もしてません(笑)。むしろゲストの方のほうが準備して来てくださってますよ。キザな言い方ですけど僕は「その日のその人」と話がしたいんです。 ◆トークに最も必要なのは「聞く」こと ――せっかくですので、読者のサラリーマンに、達人である小堺さんから実践できるトークテクニックをぜひ伝授できたらと。 小堺:達人(笑)! 今でこそ(明石家)さんまさんとか(笑福亭)鶴瓶さんとかいろいろな人が出てきて、バラエティーでもトーク番組って主流になりましたけど、昔の芸人さんはトークが苦手でしたよ。萩本さんが『オールスター家族対抗歌合戦』の司会になった時なんか「俺、司会になっちゃった」って言ってましたから。けど、それに比べて今の若手芸人はみんなMCを目指しますよね。そう考えると時代って変わったなって思います。確かに今の司会には番組を回して行ける力みたいなものが求められている。でも、だからこそトークに最も必要なものは「聞く」ことなんだと僕は思います。 ――なるほど!「話す」ことではなく「聞く」ことであると。 小堺:『いただきます』の最初の頃、よく「おまえは何も聞いてない」って叱られました。一生懸命、自分が考えたことを言おう言おうとして空回りしていたんですね。そこで改めておばさんたちの話を聞いてみたら、面白かったんですよ。そうして受け取った話を別の方向に投げてみたりするほうが、僕がしゃべるより全然面白い。そのほうが楽だし、司会として正しいんじゃないかと思うんですよ。「しゃべりたい」人は「聞いて欲しい」人。トークが上手くなりたければ「聞き上手」になること、それが一番だと思います。 ――多くの人は、ついつい「何か面白いことを言わないといけない」という気持ちになってしまいがちです。 小堺:面白いことなんて言わなくてもいいんですよ。面白いことってそうそう世の中にないですから(笑)。だから失敗話のほうが面白かったりするわけで。よく、女の子が好きな 男性のタイプに「トークが上手い人」を挙げたりしてますけど、僕は必ずしもトークが上手い人になることはないと思います。「すごくよく笑う人になる」とか。そうすれば自然とその人のカラーって出て来ますよ。 ◆本人が面白いと思ってないことが一番面白い ――トークの流れの中で、小堺さんが具体的に実践しているテクニックはありますか? 小堺:人はあまり自分のことを話したがらないけど、その人の話が実は一番面白いんです。だから、その人が意識してない部分を拾って広げることはやりますね。「車の運転するんですけどね……」「あ、運転するんですか」といった具合にもう一回聞いたり。「そこに興味を持ってくれるんだ」と思ったら、自然と話してくれます。本人が面白いと思ってないことが、実は面白かったりするんですよ。ほかにも、「その話はちょっと……」とかわされても、相手の様子をうかがいながら「話したくないわけではないな」と思ったら、相手が心を開いたところで「ところでさっきの話なんですけど」と振ると、話してくれることもあります。ただし、なぜこのテクニックが自分の家族に応用できないのか、それだけが悩みで(笑)。まだまだ未熟な自分を感じる今日このごろです。 ※このインタビューは週刊SPA!11月18日号から一部抜粋したものです <取材・文/中村裕一>
株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Twitter⇒@Yuichitter
おすすめ記事