国民の混乱は当然 政府は放射能除染のガイドラインを示すべき
環境省の試算によれば除染が必要な土壌は東京ドーム約23杯分と、汚染された国土の再生は容易ではない。それに伴い、除染をめぐる動きが活発化している。「ひまわりの除染効果なし」に戸惑い、次の一手を模索する現場から非科学的な方法まで。放射能除染の最前線を追った!
◆政府は早急に除染のガイドラインを示し、混乱に終止符を!
<ドキュメンタリー映画監督・鎌仲ひとみ氏>
除染は緊急課題ですが、そう簡単にできるものではありません。米国ワシントン州ハンフォードの核兵器工場跡地で、高レベル核廃液が広大な土地と地下水を汚染したケースがありました。米国政府は土壌除染に毎年約10億円を投入し、13年間研究してきたが、除染に成功したのは全体のたった0.3%。それほど放射性物質の除染は、難しいんです。
しかも、日本の汚染範囲はあまりにも広すぎる。東日本各地で100~10万ベクレルのセシウムが検出されていますが、これはとんでもない数値。チェルノブイリ事故発生時、ホットスポットと言われたスウェーデンの一部でさえ、70ベクレルでした。
ただし、スウェーデンはその土壌を除染するために、事故後すぐに政府が率先してカルシウムなどを土壌に混ぜるよう指示。除染に一定の成果を上げています。
国や政府がガイドラインを明確に示さなければ、国民が右往左往するのは当たり前。先行事例や研究成果を謙虚に学ぶべきです。菜の花でも、何もやらないよりはマシ。私も、チェルノブイリのナロジチで菜の花育成プロジェクトを支援してきました。除染に時間はかかりますが、バイオエネルギー生産地としての土地再生の可能性もある。決して無駄ではないと思うんです。
前例のない原発事故が起きてしまった以上、今こそ日本中の研究者の総力を結集し、政府は早急に除染の指針を示すべき。そして、市民はいかに放射性物質から身を守るかを学び、原子力プロパガンダのウソを見破らなければいけません。
【鎌仲ひとみ氏】
ドキュメンタリー映画監督。国内外の多くの被ばく者、原発を取材。現在、『ミツバチの羽音と地球の回転』を各地で上映中
取材・文・撮影/仲田マイ 鈴木大介 藤倉善朗 太平ジロー
― 放射能除染をめぐる(狂)都市伝説徹底ルポ【7】 ―
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