「安全」だとして原発再稼働を進める政府に批判集中…避難住民の苦しい胸の内
福島第一原発の事故収束も一向に進まず、IS人質事件の余波でテロの危険性も高まっている。そんななかで日本は原発再稼働・輸出に邁進。日本の原発は本当に安全なのだろうか?
◆一度事故を起こせば取り返しがつかない
「原発テロ」という脅威がさらに高まった状況だが、福島第一原発の事故収束もままならないうちに「安全」だとして再稼働や輸出を進める日本政府の態度に批判が集まっている。
原発事故から4年目を迎えようとしていた3月2日、福島第一原発20km圏の双葉郡葛尾村から郡山市に避難した菅野博氏(45歳)は、苦しい胸の内を語った。
「『除染が済めば、住めるようになる』と行政は言い、来年春にも避難解除がされる見通しですが、農業再開は非常に厳しい。兼業農家で米を作って牛も飼っていましたが、『汚された土地で作っていいのか』という疑問が消え去らないのです。川魚やキノコなど、自然の恵みの魅力もなくなってしまった」
原発事故直後、牛を残して避難したが、3週間後に戻ってきたら痩せ細りながらも生きていた。しかし預けることも運び出すこともできず、殺処分せざるを得なかった。その1頭は、2週間後に出産する母牛。菅野さんが涙をボロボロ流しながら牛を獣医に引き渡すと、雰囲気を察知した牛も涙を流した。注射を打たれた牛が横たわっても腹の中で子供がお腹を蹴っ飛ばしていた。
「『殺さなくてもよかったのに』との思いが込み上げてきていまだに夢に見ます。そういう思いはしたくない」と振り返る菅野さんは、安倍政権の原発政策を批判する。
「福島第一原発は廃炉の途中で、県内には避難者も多いのに、安倍首相は『汚染水はコントロールされている』と安全宣言、『原子力規制委員会の安全基準は世界で最も厳しい』とも言いながら再稼働しようとしています。1年半以上も稼働ゼロなのだから再稼働する必要はないでしょう。政府は『再稼働しないと電気代が上がる』と言いますが、故郷を失う損失の大きさとは比べようがありません」
「帰れる」と政府は言うが、「帰れない」現実。この現実をそのままに、日本は「原発テロ」という脅威までも抱え込むことになるのだ。
取材・文・撮影/横田一
― 「イスラム国」事件で[原発テロ]が起こる!【2】 ―
【関連キーワードから記事を探す】
完成確率は20%? 陥没事故発生で遠のく外環道完成
関電幹部が「原発マネー」3億円をもらって、“被害者ヅラ”する裏側
「名護市長選の自民候補勝利の裏に公共事業バラマキが…」古賀茂明氏
前川喜平・前文科事務次官が証言「加計学園獣医学部新設は、素人が説明・評価して進められた」
石破茂氏の発言で懸念広がる加計学園の「バイオハザード問題」
長島昭久議員が反論 「“野田政権の原発ゼロ見送り”は事実無根!!」
安倍政権の原発再稼働はアメリカ様の意向だった!?
「安全」だとして原発再稼働を進める政府に批判集中…避難住民の苦しい胸の内
川内原発が事故を起こせば「汚染水」は本州にも拡散!?
日本政府のコロナ対策を風刺し続けてきたマンガ家が見る「日本のコロナ禍」
許すな、「認諾」による「森友問題」赤木さん自殺の真相隠蔽<弁護士 弘中惇一郎氏>
安倍政権から始まったデータ改ざんの深刻度<弁護士・明石順平>
「緊急事態条項」が必要だという嘘と勘違い<法学者・小林節氏>
またしても無意味な政府の新型コロナ対策。「内閣官房モニタリング調査」が使い物にならないワケ
台湾“草食系男性”増加で変わる成人用品市場「約67.5万円のラブドールが週に70体売れた」驚きの実態
世界195か国の憲法を研究して知った「世界の変わった憲法」7選
「受けます。僕しかできないでしょ」 石丸伸二氏が明かした次の可能性
安倍晋三氏が残したもの。“優しく繊細”か“冷徹で強権的”か/山口真由
刑務所でも高齢化が問題に。受刑者が高齢受刑者の介護をすることも…
誰も見ようとしない“原発都市”の6年間を定点観測――写真が伝える福島の今
東日本大震災から6年…被災地取材で記者が大手メディアの震災報道に抱いた違和感
なぜ台湾は震災直後の日本に200億円もの義援金を送ってくれたのか――台湾在住30年の日本人作家が語る
【特別寄稿】福島とチェルノブイリ――現場を撮り続けてきた写真家が考える「25年を隔てたシンクロニシティー」
震災から5年、39人の写真家たちが撮り続けた被災地――「5年しかたっていないのに、もう終わりかい?」という思い
いまだに全壊した家があちこちに放置され…能登半島地震から1年、被災地でみた過酷すぎる冬
貧困とDVに苦しんだ「中卒社長」が、カンボジアに小学校を寄付するまで
「原発20km圏内」に残されたペット&家畜たちの今
「いつどこで大地震が起きてもおかしくない」JESEA地震科学探査機構・村井氏が警鐘
原発事故から6年、いまも20km圏内に取り残された動物たちを世話する人々