徹底除染か、集団移住か【警戒区域・大熊町の場合】【後編】

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福島大学災害復興研究所が昨年11月上旬に発表した双葉郡8町村の全世帯を対象に行ったアンケートの結果(約1万3460世帯が回答)によると、34歳以下では52.3%が「以前の居住地に戻らない」と回答。年齢が上がるにつれて帰還希望者が多くなる。戻らない理由(複数回答)としては「除染が困難」が83.1%と最も多く、次いで「国の安全レベルが低い」「原発事故の収束が期待できない」だった。「子供への放射線の影響を心配する声が若い世代では特に目立った」という

◆「戻れる」前提でいては新たな生活を始められない

放射線量の年換算早見メモ

木幡さん特製の放射線量の年間換算早見表(手前)と、大熊町内の最新放射線量がひと目でわかる液晶タブレット。町が希望者に配った

この実態を反映するように、11月20日の大熊町長選で「集団移住」を主張した木幡仁さん(60歳)は敗れたものの、4割の支持票を獲得した。

「『2~3年は仮設で我慢するが、それ以上はもう待てない』という声や、健康への不安を訴える声をいくつも聞きました。会津は大熊町のある浜通りと比べて気温が5度前後低いし、住民の気質も違う。気候風土が似ていて、通い慣れた病院のあるいわき市に流出する住民も後を絶たない」

木幡さんが移住候補地に挙げたのが、大熊町民との繋がりがある、いわき市と田村市の低線量地域だ。

「大熊町の除染には天文学的なお金がかかる。インフラを含め、再建に何十年かかるかわかりません。仮に戻れたとしても、そのときに若い人たちがいなければ元の町には戻れない。ならば『もう戻れない』ということを前提として、政府に補償を求めて集団移住するのが、現実的対応だと思います」

ここにきて国の動きも加速している。12月12日、細野豪志原発事故担当相が原発事故による汚染廃棄物の中間処理施設を「双葉郡にお願いする方向になると思う。年内にも方針を決めたい」と双葉郡の自治体関係者に伝えた。新たに設けられる、被曝線量50mSv/年以上の「長期居住困難区域」に建設する考えとみられる。この区域には、大熊、双葉、浪江、葛尾の各町村の一部地域が該当する。

10月下旬、大熊町民有志で発足した「大熊町の明日を考える女性の会」のメンバー11人が都内で細野大臣と面会。中間処理施設の町内設置を要望し、「そのかわり定住の環境、土地、家や農業の土地を政府で示してほしい」と、集団移住できる環境の整備を求めた。これまで世界各地の放射能汚染地を取材、福島原発事故後は周辺住民の姿を撮り続けてきた写真家の森住卓氏はこう語る。

「福島原発周辺の除染は、都会の場合とは違う。森林を皆伐して全ての表土を剝ぐというのも無理な話だし、その廃棄物を処理する場所もない。莫大な税金を投入して山野を引っかき回すだけ。先の見えない、果てしない作業が続くことになります。住民は『戻れる』という前提でいるため、新たな生活に踏み出すことができない。もう『当分、人が住めなくなってしまった地域がある』ということを認めるしかな い。そのうえで、移住希望者が新たな生活を始めるための支援策を整備するべきだと 思います。私自身、この地域の自然の豊かさや人の繋がりの温かさに惚れ込んでいただけに、本当に残念なことですが」

原発事故による国土の汚染はこれほどにも深刻なのだ。

取材・文/北村土龍 撮影/田中裕司

福島第一原発風下の村 森住卓写真集

世界各地で放射能汚染の現場を歩いてきた写真家が記録した「風下の村」の姿とは




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