少年A、小保方晴子…改めて注目される「名前のない世代」とは?
酒鬼薔薇(少年A)、ネオむぎ茶、加藤智大、小保方晴子。いずれも重大な事件や犯罪で世間を賑わせた、この顔ぶれにはある共通点がある。それは“’82年前後生まれ”ということだ。「ロスジェネ」と「ゆとり」の両世代に挟まれたこの世代は、かつて「キレる17歳」と呼ばれ、世間に恐れられていた。
一見、内向的で大人しいが、凶暴な自己顕示欲と暴力性を秘めている。それが彼らに対する他の世代の評価だった。しかし、「キレる17歳」と呼ばれた’00年以降、彼らに「ロスジェネ」や「ゆとり」のような定まった呼称はついていない。
今年4月に出版された『1982 名前のない世代』(宝島社刊)は、そんな’80年代前後に生まれた「名前のない世代」を、同じく’83年生まれの著者が考察した注目の評論集だ。なぜ今、彼らに注目したのか、なぜ彼らは今日まで名前を持たなかったのか――。著者である佐藤喬氏に話を伺った。
――いきなり細かい話からで恐縮ですが、このタイトルは“いちきゅうはち~”なのか、“せんきゅうひゃく~”なのか。どちらの読み方が正しいのでしょうか。
佐藤:“いちきゅうはちにい”ですね。
――その理由は。
佐藤:まず、“せんきゅうひゃく~”だと、タイトルが長くなってしまいますよね(笑)。
それと、なるべく記号的、抽象的な雰囲気を出したかったんです。この本は、”世代”について書かれたものですが、当事者だけの“自分語り”にはしたくないと思っていました。もっと遠い世代の人たちに、自分の言葉を届かせるため、特定の解釈に縛られない言葉を選んだつもりです。
――自分語りをしたくないのはなぜですか。
佐藤:今ってSNSでも活字メディアでも、自分語りがすごく盛んですよね。ただ、それは自分が所属する細かい集団(クラスタ)の中で、言いたいことを言い合い、聞いてくれる人同士で「共感」し合うだけであって、言ってしまえば、ただの慣れ合いなんです。それがすごく嫌でした。
今回、興味深かったのが、「著者のエピソードが出てこない」という感想が見受けられることです。確かに、僕は’83年の生まれで、少年Aも加藤智大も同世代の人物です。でも、批評やノンフィクションに著者のエピソードが出てこないのは普通のことですよね。
――具体的にその理由は?
佐藤:物事を客観的に観察したり、分析したりするのには対象物と距離をおく必要があります。僕が本書に登場する同世代の人たちの一人称を「僕ら」ではなく、あえて「彼ら」にしたのもそのためです。対象と距離を取る必要があるのに、そこに違和感を抱く読者がいるというのは意外でした。
世の中に自分語りをする作品が氾濫してしまった結果、批評やノンフィクションというジャンルにも、それが求められるようになってしまった。そもそも物を書くことの意味って、感覚や前提を共有していない未知の人に何かを発信することにあると思うんです。
もちろん、フィクションの世界には自分語りを昇華させた私小説というジャンルがありますが、それは例外。ノンフィクションの世界においてすら、その前提が崩れてしまっているのです。
「ノンフィクションというジャンルの前提が崩れてきている」
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