更新日:2017年11月16日 20:50
お金

スイカを割れなかった人はどうなるの?――連続投資小説「おかねのかみさま」

21:30 蒲田 居酒屋リグレット 「学長」 「ん?」 「むらちゃん、なんかあったのかしらね。お酒飲んでもここまで酔っ払うのってみたことないわ。」 「歳なんじゃないの?」 「むらちゃんっていくつだっけ?」 「んーと、確かバブルの頃の学生だったから、今年でよんじゅうろく?なな?」 「あら。アタシよりひとまわり上だわ」 「そうか。あの頃の学生はバブル終わっちゃった&就活だったからなぁ」 「たのしかったわねぇ…」 「なんとなく話が噛み合わないのは世界が違ったからじゃな」 「かもしれない」 「おまたせしましたぁ!えだまめめございます!」 「けんたくん」 「はい!」 「これから起業をしようとする人間が、『えだまめめ』とか噛んでたらダメじゃ」 「すいません!」 「かわいくていいじゃないのー。ねぇけんたくん」 「いえ!学長のおっしゃるとおりです!」 「ところでけんたくん。この枝豆はどこ産の枝豆ちゃんだ?」 「しょうしょうお待ちください!!!」 トトトトトトトトトトトト… 「ねぇ、学長がけんたくんに厳しくするのは、なんかこう、才能みたいなものを感じてるから?」 「んーーーーー」 「それとも…」 「うん。そうじゃな。単なる暇つぶしにちかい」 「あー」 「そりゃね、やることが決まったら暇つぶしなんかしてる間もないくらいにテキパキすすめて行くんじゃが、無駄にあれこれ言うのもよくないからな」 「どういうこと?」 「んー、ママにも昔、男の子だった頃があるじゃろ」 「あったわね。気持ちは女の子だったけど」 「そう。そういう人のほうがわかりやすいとおもうが、この国の男の子は小さな頃から周りの大人にスイカ割りをさせられてるんじゃ」 「スイカ割り?」 「うん。目隠しさせられて、棒キレもたされて、グルグルまわされて、三半規管にある程度のダメージがある状態でスタートさせられて、まわりは『がんばれー!』とか『もっとみぎ!』『もっとまえ!』とか言いつつ、応援とかするじゃろ」 「うん。スイカ割りだからね」 「あれをな、子供の頃から長期間やられたら子どもはどうなる?」 「あ」 「大した理由もなく勉強させられて、ガンバレガンバレ言われて、横一列に並んだ友達と一緒に、むちゃくちゃに声援が交じる中、スイカ割る。何人かは割ることができて、何箇所かで胴上げされたりして、勝者と敗者が決まるんじゃ」 「割れなかった人はどうなるの?」 「ウチの学校に山ほど来てた」 「あー…」 「でもな、起業するってのはスイカ割りの能力とはあまり関係ないんじゃ」 「そうなの?」 「うん。もしそこで大々的なスイカ割り大会があるのなら、入場料とったり、撮影を請け負ったり、トウモロコシ焼いたり、会場の設営したり掃除したり、二次的な産業がいくらでもある」 「なるほど」 「規模の大小に限らず、勉強苦手だったひとでもそうやって敗者復活することができる。それもひとつの起業のあり方じゃ」 「でも、それができちゃう人って、もともと才能があるんじゃない?」 「その程度のことには才能は要らん。需要のとおりにやるだけじゃ。バカはバカなりに、自分が学んできたことよりも需要のほうを優先できれば、うまくいく」 「なるほど」 トトトトトトトトトトトト!! 「学長!えだまめの産地!わからないとのことでした!」 「そうか。じゃあ、次までに調べておいて」 「はひぃ!」 次号へつづく 【大川弘一(おおかわ・こういち)】 1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。 Twitterアカウント https://twitter.com/daiokawa 2011年創刊メルマガ《頻繁》 http://www.mag2.com/m/0001289496.html 「大井戸塾」 http://hilltop.academy/ 井戸実氏とともに運営している起業塾 〈イラスト/松原ひろみ〉
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