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上場した「メルカリ」に不安材料アリ!? ’18年最大&最注目IPOの行方は…

「今年最大の目玉IPO」と注目を集めた「メルカリ」が堂々のデビューを果たした。6月19日に東証マザーズ上場を果たすと、公開価格3000円を大幅に上回る5000円の初値を形成。その後も買いを集めて、初日は5300円で取引を終えたのだ。終値で算出した時価総額は約7172億円。これは同市場トップだったミクシィ(2600億円)の3倍弱にもなる。兜町関係者は「主幹事証券の大和と三菱UFJモルスタは顧客に『5000円割れは買い』と勧めている」と底堅い値動きの裏側を明かしながらも、想像以上の人気ぶりに驚きを隠さない。 メルカリ「もともと昨年末の上場が期待されていましたが、“現金出品事件”などを受けて上場を延期。その当時の想定公開価格は1500円程度で、時価総額は2000億円前後になるだろうと予想されていたんです。ところが、今年5月半ばに上場が決定した際には想定価格が2200~2700円にアップ。さらに仮条件決定で2700~3000円に引き上げられて、最終的に公開価格は上限の3000円に決定しました。つまり、最初の想定価格から比較すると、3倍強の株価をつけているんです。‘16年に上場したLINEは公開価格の1.5倍の初値をつけましたが、人気、期待値、強気の株価のどれをとってもLINEを上回っていると言っていいでしょう」  ご存じのとおり、昨年はメルカリを舞台に数々の事件が勃発した。その代表例が、クレジットカード枠の現金化ニーズを狙った“現金出品”。2万円分のお札を2万5000円程度で売却すれば、法定利率を上回る利息を得たとして出資法に抵触する。その法の網をかいくぐろうと、「2万円チャージしたSuica」や紙幣を折り紙代わりにした“オブジェ”を出品する輩も現れた。  本人確認が不要な点を悪用して、盗品をメルカリ上で売りさばく犯罪も横行。ユーザーが物品を売却して得た売上金をメルカリ内にプールしたまま売買に利用できる仕組みは、資金決済法に抵触するという指摘も受けた。結局、メルカリは10月に住所・氏名・生年月日の登録を義務化し、11月にはプール期間を1年間から90日に短縮。こうした対策を経て、上場に漕ぎつけたのだ。創業者の山田進太郎会長に請われてメルカリの立ち上げを手伝ったという実業家の矢野慎一郎氏も次のように話す。 「山田さんは楽天にインターンで入り、楽天オークションの立ち上げなどを経験したCtoCビジネスのプロフェッショナル。創業時から六本木に本社を構えているので、イケイケのベンチャー社長と思われがちですが、本人は完全な仕事人間です。ユーザーの利便性ばかり追求してコンプライアンスをないがしろにしてきた……などといわれているようですが、実際には当初から悪用される可能性を想定して対策を練っていました。カスタマーサポートやパトロール人員の増員には特に力を入れたので。ただ、予想をはるかに上回るスピードでユーザーが増えてしまった。ようやく、そのスピードに対策が追いついてきた形でしょう」  とはいえ、不安材料がなくなったわけではない。仮条件決定の前日には消費税1億円の申告漏れが発覚した。元国税担当の全国紙記者が話す。

海外流通総額は“低空飛行”中のメルカリ

「ポイントの処理方法が不適切という指摘を受けたのです。通常のポイントは発行者がポイント分に相当する割引額を負担する『販促のための仕入れ』と見なされるため、消費税額から控除される『課税仕入れ』として処理できます。つまり、使用されたポイント分に消費税はかからない。一方、メルカリの場合は販促用に発行しているポイントのほか、利用者の売上金をポイント化する仕組みがある。この後者に対価は発生していないから『課税仕入れではない』と判断されたようです。ただ、気になるのは追徴課税を食らったこと。本来なら指摘を受けた企業は修正申告に応じるものですが、メルカリは国税の判断が誤っているとして拒否したのでしょう。認識のズレが解消されていないので、同じ問題が今後も発生する可能性があります」  メルカリの規模を考えれば1億円の追徴課税など誤差としか思えないが、財務内容を不安視する声もある。DZHフィナンシャルリサーチのアナリスト、田中一実氏が話す。 「メルカリは赤字続き。予想売上高しか発表していませんが、第3四半期までの数値からすると、今期も数十億円の最終赤字に終わるでしょう。原因は莫大な広告宣伝費です。その宣伝効果で国内ではアプリダウンロード(DL)数、流通総額ともに右肩上がりを続けていますが、すでに50%のシェアを握っており、近く頭打ちになることが予想されています。一方で、海外には’14年から進出し、着実にDL数を伸ばしていますが、流通総額はほとんど伸びていない。このままだと国内の利益を海外での宣伝費として吐き出し続ける可能性が高い。投資家の期待とは裏腹に、黒字化の見通しは立っていないんです。決算直前にもかかわらず、利益見通しを伏せているメルカリの姿勢を疑問視しているアナリストも少なくありません」  国内では飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長したメルカリだが、海外では低空飛行を続けていた……。上場に伴う公募増資で調達する最大630億円の資金でテコ入れなるか? IPOのその後に注目したい。 -「メルカリ」を舞台にした事件の数々― <’15年> 5月 ・赤ちゃんが1000円で出品されてネット上で話題に <’16年> 7月 ・利用規約でゲームアカウントの売買を解禁したことで批判が噴出 <’17年> 4月 ・現金出品が排除されていったことを受けて、現金をチャージしたSuica、紙幣で作った“オブジェ”などが登場 6月 ・サーバーの切り替えの際に約5万4000人分のメルカリユーザーの個人情報が流出 ・メルカリアカウントをオークションサイトで販売していた男らが、私電磁的記録不正作出・供用罪の疑いで逮捕された 7月 ・ニンテンドースイッチの人気ぶりを受けて「外装 箱のみ」を高額で出品する詐欺師が増殖 8月 ・約800冊もの“万引本”をメルカリに出品して110万円以上を稼いでいた女を徳島県警が逮捕 9月 ・「コンピュータウイルス入手情報」を出品していた大阪府の中学2年生の男子を奈良県警が児童相談所に通告 11月 ・現金出品で法定利率以上の利息を受け取った出資法違反の疑いで千葉県警などが男4人を逮捕 <’18年> 4月 ・女子高生の盗難ユニホームをメルカリで転売していた男を兵庫県警高砂署が逮捕 ・’17年に水難に偽装して妻を殺害した男が遺品をメルカリで売りさばいていたことが発覚 5月 ・消費税1億円申告漏れで東京国税局がメルカリに追徴課税 <取材・文/池垣完>
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