時代劇の金字塔『鬼平犯科帳』が28年の歴史に終幕。主演・中村吉右衛門「時代劇はなくならない」
今年、テレビ時代劇の金字塔『鬼平犯科帳』が28年の歴史に幕を下ろす。1989年7月12日放映の第一シリーズ「暗剣白梅香」から主人公・長谷川平蔵を演じてきた俳優・中村吉右衛門は「今こうして記者会見の場を設けさせていただくと、何かこれから始まるのではないか、という感じがいたします」と笑顔をみせた。
『鬼平犯科帳』は池波正太郎の小説を原作に、江戸時代後期に盗賊・凶賊から“鬼の平蔵”として恐れられた長谷川平蔵の姿を描く作品。池波が鬼平のモデルにしたのは中村の実父・松本白鸚だ。時代劇『鬼平犯科帳 THE FINAL』は12月2日、3日21時から二夜連続(前編『五年目の客』、後編『雲竜剣』)で放映される。
自身が40歳のときに、原作者の池波から出演オファーを受けながら断った理由を「私は40歳ではまだ小僧っ子で、酸いも甘いもかみ分けたような、人生の裏表も知っている大人ではなく若造でした。鬼平という役は大人のイメージが強かったので、とてもできないと思って断りました」と当時の心境を振り返った。
そして、45歳で再オファーされて引き受けた理由を「原作者から2度もご指名をいただいて、まだどうかなと思ったのですが、鬼平は45歳のときに火付盗賊改方という役職に就いたという記録が残っているので、これを頼りにやってみたらどうかなと思って、お引き受けしました」と知られざるエピソードを明かした。
連続ドラマ・単発ドラマ合わせて全149作続いた人気時代劇で、記念すべき150作の最終回をもってシリーズは完結。前後編ともに出演する娘婿の尾上菊之助と同作で初共演することについて中村は「最後だということで、賑やかしに出てくれまして、一生懸命やってくれました。菊之助演じる剣豪・石動虎太郎との一対一の激しい殺陣の立ち回りもございまして、親が斬られちゃどうしようもないんですけど、倅を斬ることになってよかったなと」と笑いで会見の場を和ませた。
また、普段は歌舞伎俳優として活躍する中村だが、時代劇が減少しつつある現状について聞かれると「制作やテレビ局の方に考えていただくこと」と苦笑しながらも「時代劇そのものはつまらないものではなく夢をふくらませ、現代には考えられない男女・主従の仲を描くことができます。しかし、時代劇は現代のドラマとは撮影するのが大変。ロケーションが限られていますから。それでも、時代劇というものはなくならないんじゃないか」と自身の考えを述べた。
そして記者会見の25日、最終回を迎える『鬼平犯科帳』の放映に先がけ、28年間をまとめたファンブック『鬼平犯科帳を極める ザ・ファイナル』が発売された。主演の中村吉右衛門をはじめ、レギュラー陣や尾上菊之助へのインタビューや、過去の名場面、映像美を支えたスタッフの舞台裏にも迫っている。
普段は時代劇を観ないという若い世代にも、テレビ時代劇の金字塔『鬼平犯科帳』が28年の歴史に幕を下ろす瞬間を目に焼きつけてほしい。
<取材・文・撮影/北村篤裕>
『鬼平犯科帳を極める ザ・ファイナル』 テレビ時代劇の金字塔『鬼平犯科帳』放映28年の軌跡 |
ハッシュタグ