タイ国王崩御で自粛ムード。“夜の街”は一体どうなっているのか?【現地ルポ】
最後に訪れたのは、日本でもご存知の方も多いかもしれないが、ゴーゴーバーが乱立する「ソイ・カウボーイ」。欧米人観光客にも人気の高いこのエリアであり、バンコクを代表する通りの一つだが、ここもまた完全な自粛ムードだった。普段は腕を掴まれ、半ば強引な形で店に連れ込まれることもあるが、そのようなエグい客引きはなく、軒先に立つセクシーな格好をした女性や“元”男性たちの表情もどこか暗い。とはいえ、日本人観光客をちらほら見かけ、同通りで一番人気のゴーゴーバーの「バカラ」に入ってみると、これまでとは一変して客で溢れていた。よくよく見ると、そのほとんどが日本人。どんなに自粛ムードだろうが、人気店には人が集まるということだろう。普段と変わらない光景を見て、心のどこかで安心してしまった。ウエイトレスのおばちゃんに話を聞くと「この通りに来る観光客は明らかに減っているけど、うちは普段とあまり変わらないわね」とのことで大きな影響はない様子だった。
いくつかの歓楽街をまわって気づいたのは、店舗側の“目立たないように”といった配慮からの自粛ムードで活気が落ちていることと、日本人のみならず観光客が減っていることだった。店舗には警察の指示があったのかもしれないし、警察は見回りを常に行っているため、派手な営業ができないことも事実だろう。また、観光客にとっては「何が起こるかわからない」と警戒し、客足が遠のいている可能性もある。特にタイの場合、海外での報道のされ方がテロといったネガティブなニュースが多いため、日本からは何かあれば「治安は大丈夫?」などと聞かれるが、今回に関してはまったくの別問題。むしろ軍事政権は、王位の不在期間で不穏分子の排除を加速させていく可能性もあり、治安はよくなっていくともみられている。
現在、盛り場でもベロベロに酔っぱらって乾杯を連呼しバカ騒ぎできるムードではないことは事実だが、普通に遊ぶくらいは何も問題はない。そして、「熱しやすく冷めやすい」タイ人の気質を考えれば、服喪期間の1か月を機に、徐々に元のタイに戻るはず。タイ観光に躊躇されている日本人の方には、観光にはまったく問題はないのでぜひ来てもらいたいと願うが、“それなりの配慮を持って”ということも追記しておく。 <取材・文・撮影/ワダタケシ>
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