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サンタの格好をしたストリップ嬢のおっぱいに「メリークリスマス」とつぶやいた夜――爪切男のタクシー×ハンター【第十六話】

 自分はクリスマスを楽しめる人間ではない。クリスマスに期待する女は好きじゃない。サンタのコスプレをする女は好きじゃない。でもサンタのコスプレをする風俗嬢は大好きだ。冒頭から話が脱線したが、じゃあ誰とならクリスマスを楽しめるかと言えば、それは自分の子供になる。子供は大好きなのだが、自分の子供が欲しいですかと言われると答えは「ノー」である。どちらかと言えば血の繋がっていない子供の方が欲しい。その理由に関しては長くなるというかうまくまとめ切れないので割愛させて頂く。簡単に言えば、血を越えた絆というものに憧れているのかもしれない。  なんとか養子をもらうことはできないかと養子縁組相談に行ったこともある。子供が不自由しないだけの充分な収入と健やかに育つための安心の家庭環境が整っていないためにあえなく不合格となった。子供の幸せを第一に考えた審査内容は非常に納得のいくものだった。  自分の家で育てることができなくても、生活資金を援助するだけのあしながおじさんスタイルで子供を持てないかと考えた。それならということで日本より物価の安いタイに目を向けた。ものすごく乱暴な計算をすれば、家賃、食費、光熱費、娯楽費などで、タイは日本の約2分の1ぐらいの安さである。これなら私の財産でもなんとか養育費を捻出できるかもしれない。  どうせ金を出すなら、夢を持っている子供、強い子供、野望に燃えている男がいい。それはムエタイしかない。タイの国技であるムエタイ(タイ式キックボクシング)のジムにて、一流キックボクサーになるために日々努力している子供の生活費を援助する里親になるのだ。私は日本からお金を毎月送る。息子には、必ず月に一回はタイから私に手紙を送ることを義務付ける。息子からの手紙に添えられた写真の数々。笑顔でサンドバックを叩いている私の息子。少し身体が大きくなり、ぎこちないファイティングポーズを取る私の息子。練習がうまくいかないのか少しふてくされた顔をしている私の息子。彼女と思われる女と一緒に笑顔を浮かべる私の息子。
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そして迎える息子のデビュー戦
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死にたい夜にかぎって

もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー!

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