雑学

サンタの格好をしたストリップ嬢のおっぱいに「メリークリスマス」とつぶやいた夜――爪切男のタクシー×ハンター【第十六話】

 終電がとうにない深夜の街で、サラリーマン・爪切男は日々タクシーをハントしていた。渋谷から自宅までの乗車時間はおよそ30分――さまざまなタクシー運転手との出会いと別れを繰り返し、密室での刹那のやりとりから学んだことを綴っていきます。

サンタの格好をしたストリップ嬢のおっぱいに「メリークリスマス」――爪切男のタクシー×ハンター【第十六話】「どんなクリスマスを過ごしていようが、私は今ここに、こうして生きている」

 クリスマスイブの夜が更けていく。私は職場にてエロ動画サイトの更新作業中であった。今回の特集は「雪を見ながら観たいエロ動画」である。そんなエロ動画などこの世に存在しない。迷走を突き抜けて地中を掘り進みはじめた仕事に多少の疲れを感じつつ、ベランダで小休憩を取る。ベランダから見下ろす渋谷の街はクリスマス一色だった。鮮やかなイルミネーションで彩られた街、一様に幸せそうな顔をした人々がうごめいている。こういう下手くそな街の描写しかできないから、私はエロ動画紹介サイトの仕事をしているのだ。

 当時の私は、過去に自分の唾を変態マニアに売って生計を立てていた元唾売り女と同棲をしていた。彼女はクリスマスとかバレンタインのようなイベント事には全く興味がない女だったので、そういうイベントが苦手な私にとっては、無理に盛り上がらなくてもいいし余計な出費も抑えられるしで大助かりだった。ただ、彼女曰く、そういうイベントがある時は、唾が飛ぶように売れる稼ぎ時らしく、すぐに引退を撤回するプロレスラー大仁田厚のように、彼女が唾売り界に現役復帰をするのではないかという心配はあった。

 ベランダからオフィス内を覗き込むと、部下のラッパーたちが仕事もせずに「理想のクリスマス」というテーマの会話で賑わっている。編集長という立場上、会話の輪には加わらないが、私も「理想のクリスマス」というものを気分転換に考えてみることにした。

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自分はクリスマスを楽しめる人間ではない

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死にたい夜にかぎって

もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー!

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